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インタビュー:LNG調達価格、東アジア最安値狙う=JERA社長

2015年05月28日(木)03時00分

 5月28日、JERAの垣見祐二社長がロイターのインタビューに応じた。写真はLNGタンカーの前に立つ従業員。東電発電所で2013年2月撮影(2015年 ロイター/Issei Kato)

[東京 28日 ロイター] - 東京電力<9501.T>と中部電力<9502.T>の燃料調達・火力発電事業の統合を目指す共同出資新会社「JERA(ジェラ)」の垣見祐二社長はロイターのインタビューで、液化天然ガス(LNG)の調達価格について「東アジアで一番安い価格で、欧米とそん色ない水準が目標になる」と強調した。

東アジアに特有の原油価格に連動したLNGの調達価格体系を見直し、米国市場の価格指標を取り入れたLNGの購入拡大など調達の多様化を図ることで、引き下げの実現を目指すとしている。

<既存火力の統合判断、先行の合流事業がカギに>

東電と中部電が折半出資して4月末に設立されたJERAは、段階的に東電と中部電の燃料調達・火力発電事業の統合を進める。LNGなどの燃料輸送やトレーディングを今年10月に、燃料調達や海外発電などを来年夏にそれぞれ統合させる。

国内にある両社の既存火力発電事業を統合させるかどうかは、2017年春ごろに判断する。実現すれば合計出力は6700万キロワットと、原発67基分に相当する巨大な火力発電会社が誕生する。

中部電出身の垣見氏は、既存火力の統合について「親会社で話し合うこと」としながらも、「来年までに統合していく事業で、JERAがうまくいっているかが重要だ」と述べ、先行して統合する事業の成否が判断のポイントになるとの認識を示した。

<東アジアプレミアム、解消できるか>

JERAの試金石が、LNG調達価格の引き下げだ。東電と中部電のLNG調達量を合計すると年間4000万トンとなり、韓国ガス公社<036460.ks>と並ぶ世界最大のLNG輸入事業者に躍り出る。規模拡大による購買力増強を通じて、売り手側から有利な調達条件を引き出すのが狙いだ。

垣見氏は「この会社の設立の目的の1つは、国内の発電事業の原価を下げていくこと。そのために安い調達が必要となる。東アジアで最安値が目標だ」と述べた。

垣見氏が言及した東アジアとは日本、中国、韓国、台湾を指す。天然ガスの調達価格に影響する輸送手段は、日本と中国とでは事情が異なる。

トルクメニスタンなどからパイプラインを通じて天然ガスを輸入している中国や、天然ガス網が整備されている欧米と違い、日本、韓国、台湾では天然ガスの輸入はLNGに限られている。

また、日本などでは石油価格に連動してLNG価格が決まる価格体系が続いているため、長年続いた原油高騰局面では割高な天然ガスの調達が続いた。

垣見氏は、JERAによる調達価格について「東アジアで最安値であればよいのではない。アジアプレミアムにより東アジアの調達価格は、(昨年の原油急落以前は)非常に高かった。アジアの価格をどのように下げるかという役割をJERAは負っている」と力説した。

<多様化で調達価格引き下げ挑む>

引き下げの具体的な方策として、垣見氏は「原油連動だけの調達から、ヘンリーハブ(米国の天然ガス価格指標)や欧州のNBP(英国ナショナル・バランシング・ポイント=欧州天然ガス指標)などに連動する、価格指標の分散化を進めていことが重要だ」と述べた。

東電と中部電からLNG調達事業を引き継ぐJERAがどの程度、原油連動によるLNG調達の比率を引き下げるか、その目標について垣見氏は「持っているが言えない。中部電力では5割以下にしていくと説明していたが、参考になるのでは」と話した。

東電、中部電とも米国産シェールガス由来のLNGの調達を2017年から始める計画で、その場合の価格設定は原油連動ではなくヘンリーハブ連動だ。垣見氏はLNG調達における原油連動比率について、「中部電力の場合、引き下げの方法はほかにもいろいろあり、劇的に減っていく」と述べた。

<サハリンからのパイプラインは重要>

LNGに限定されている日本の天然ガス輸入だが、2000年代初頭にはロシア極東のサハリン島の大陸棚に埋蔵される天然ガスについて、首都圏までパイプラインを敷設して輸入する構想が浮上した。ただ、当時の東電の実力者による反対もあり実現しなかった。

日本から地理的に近いサハリン産なら、LNGよりもパイプラインの方が天然ガスを安価に調達できるとエネルギー専門家は指摘する。

ただ、ウクライナ情勢をめぐり米露関係が悪化している中、日露間のプロジェクト推進については「とてもそのような状況ではない」(経済産業省幹部)との指摘が聞かれる。

垣見氏は、サハリンからパイプラインを敷設して天然ガスを輸入する構想について「JERAが検討するかはノーイメージ」としながらも、「一般論としてはやるべき。パイプラインは必要だ。どこの国とはあまり言えないが、サハリンは重要な候補だと思う」と述べた。

その理由として、同氏は「パイプライン供給とLNGを競争させることによって、天然ガスの流動性を高めたり、(流通の)ハブを作って(市場の)透明性を高めていくという戦略を中国や韓国は志向していると思う。やらなければ、日本は孤立していく」と話した。

(インタビュアー:浜田健太郎、月森修 インタビューは26日)

(浜田健太郎 編集:田巻一彦)

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