コラム

大気中のCO2濃度、年増加量が観測史上最大に...日本の人工衛星「GOSATシリーズ」は温暖化対策にどう貢献するのか

2025年02月18日(火)11時25分
溶ける地球

(写真はイメージです) funstarts33-Shutterstock

<CO2やメタンなど温室効果ガスの大気中濃度を宇宙から観測するために開発が進められてきたGOSATシリーズ。その1号機「いぶき」の観測結果が発表され、2023年から24年にかけてのCO2濃度の年増加量は3.5ppmで、11年の観測開始以降で最大の上昇幅となっていたことが分かった>

地球環境問題と聞くと、大半の人が真っ先に思い浮かべるのが「科学技術の発展によるCO2(二酸化炭素)排出量の増加」でしょう。

実際に、多くの研究で地球温暖化の急激な進行とCO2排出量の増加との間には密接な関係があると示唆されています。

産業革命以降、化石燃料が大量に使われるようになると人為的なCO2排出量は急増し、2023年のCO2濃度の世界平均濃度は420ppm(温室効果ガス世界資料センター調べ)でした。この値は、産業革命以前(280ppm)の1.5倍です。

EUの気象情報機関であるコペルニクス気候変動サービス(C3S)は今月6日、「25年1月の世界平均気温は13.23℃で、1月としては観測史上最高となった」と発表しました。この数値は、産業革命前の水準とされる1850~1900年の平均よりも1.75℃高いものです。

GOSATシリーズにかかる期待

地球温暖化対策として国際的に掲げられている数値目標は、21年のCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)で採択された「世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて1.5℃に抑える(グラスゴー気候合意)」です。しかし同機関によると、24年の年間世界平均気温は15.1℃で1850~1900年の平均を1.60℃上回り、初めて単年で1.5℃を超えた年となりました。

今後の対策のために地球温暖化の現状を正確に把握するには、温室効果ガスの精密な計測が不可欠です。そこで、日本の温室効果ガス観測衛星(GOSATシリーズ)は、宇宙からの観測によって大きく貢献することが期待されています。

JAXA(宇宙航空研究開発機構)は6日、国立環境研究所、環境省などと開発・運用中のGOSATシリーズ1号機「いぶき」の観測結果を発表しました。それによると、地球の全大気におけるCO2の平均濃度は、23年から24年にかけての年増加量が2011年以降の14年間で最大の3.5 ppmになっていたことが分かりました。

地球温暖化の主要因はCO2で議論はないのでしょうか。日本の人工衛星は地球温暖化対策に対してどのような貢献ができるのでしょうか。地球温暖化の最新状況について概観してみましょう。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

主要行の決算に注目、政府閉鎖でデータ不足の中=今週

ワールド

中国、レアアース規制報復巡り米を「偽善的」と非難 

ワールド

カタール政府職員が自動車事故で死亡、エジプトで=大

ワールド

米高裁、シカゴでの州兵配備認めず 地裁の一時差し止
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリカを「一人負け」の道に導く...中国は大笑い
  • 4
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 6
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 7
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 8
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 9
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 10
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story