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荒川河畔の「原住民」(16)

ホームレスはどうやって「ホームレスになる」のか。誰であろうと、その可能性はある

2024年12月21日(土)15時05分
文・写真:趙海成

絶望から希望への「緩衝期」が得られるはず

日本人が他人に迷惑をかけないことを重視しているのは、よく知られている。自分が困っていて、生活を維持できないような場合でも、他人に助けを求めるより自殺を選んでしまう人がいる。本当に他に選択肢はないのだろうか。

そんな時は、ホームレスになろう――。極端な意見に聞こえるかもしれない。もちろん、路上生活を誰にでも推奨するわけではないが、これまで荒川河川敷で交流と取材を続けてきた私は、それも1つの道だと信じている。ホームレスになることで、絶望から希望への「緩衝期」が得られるはずだ。

キリスト教には「神は扉を一つ閉じれば、必ず窓を一つ開けてくださる」という教えがあるという。日本ではこの窓が「ホームレスの窓」なのではないか。窓の向こうには、お金がなくても、生きていける世界が広がっている。

私が言いたいことは、ホームレスという存在は、さまざまな理由で人生に行き詰まった人々の貴重な命を延長することに直結しているというものだ。


[筆者]
趙海成(チャオ・ハイチェン)
1982年に北京対外貿易学院(現在の対外経済貿易大学)日本語学科を卒業。1985年に来日し、日本大学芸術学部でテレビ理論を専攻。1988年には日本初の在日中国人向け中国語新聞「留学生新聞」の創刊に携わり、初代編集長を10年間務めた。現在はフリーのライター/カメラマンとして活躍している。著書に『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』(CCCメディアハウス)、『私たちはこうしてゼロから挑戦した──在日中国人14人の成功物語』(アルファベータブックス)などがある。

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