最新記事
米外交

「アメリカは4年前より地政学的に強くなった」って、ジョークですか?

US in much strong geopolitical position today than 4 years ago: Blinken

2024年10月3日(木)19時10分
ジーザス・メサ
イランがイスラエル中部に向けて発射した弾道ミサイルとそれを迎撃するイスラエル防空網

イランがイスラエル中部に向けて発射した弾道ミサイルとそれを迎撃するイスラエル防空網(10月1日) (Matan Golan / Sipa USA)

<ブリンケン米国務長官が『フォーリン・アフェアーズ』の11月号に寄せた論文のタイトルが「アメリカは......強くなった」。ウクライナ戦争、中東紛争、中国の台頭など世界中が戦火やその予兆で溢れているのに?>

今のアメリカは4年前と比べ、はるかに強固な地政学的ポジションにある──アントニー・ブリンケン米国務長官はバイデン政権のこの4年間の外交実績をそう総括した。

ブリンケンは外交専門誌フォーリン・アフェアーズの11月号に寄稿した論文で、中国とロシアの脅威に対するバイデン政権の戦略とアプローチを自画自賛した。いわく「バイデン政権の戦略のおかげで、アメリカは4年前と比べてはるかに強固な地政学的地位にある」。

バイデン政権の実績を擁護するブリンケンの論文は、皮肉なことに、アメリカが近年の歴史で、ことによると最も手強い地政学的難題に直面するタイミングで発表された。

ウクライナ戦争、中国との緊張の高まりに加え、今や中東紛争もエスカレートの一途をたどっている。

ブリンケンの論文を掲載した11月号が発売された日、イランはイスラエルに向けて約200発の弾道ミサイルを発射した。過去最大規模のこの攻撃は、イランが支援するレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの最高指導者らを、イスラエルが殺害したことに対する報復だ。

「トランプ時代よりまし」

紛争がここまでこじれたのは、元はと言えば、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルに仕掛けた奇襲攻撃に端を発する。昨年10月7日に起きたこの攻撃から、もうじき1年が経つ。

この奇襲攻撃が勃発する直前には、ジョー・バイデン米大統領の国家安全保障担当補佐官を務めるジェイク・サリバンが「今の中東はこの20年間で最も平穏だ」などと述べていた。

だが、ハマスの奇襲攻撃に対するイスラエルの報復は激化の一途をたどり、レバノンのヒズボラに飛び火し、今やイスラエルとイランの全面戦争に発展することすら懸念されている。

共和党をはじめとする批判派は、外国の脅威に対するバイデン政権の抑止戦略は不十分で、ロシアやイランをつけ上がらせる結果になった、と主張している。

それでもドナルド・トランプ前大統領時代と比べれば、国際社会におけるアメリカの地位は向上したと、ブリンケンは言う。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係

ワールド

シリア担当の米外交官が突然解任、クルド系武装組織巡

ビジネス

ロシア財務省、石油価格連動の積立制度復活へ 基準価
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中