最新記事
イスラエル

ガザ戦争が招いたイスラエル「労働者不足」の深刻度...パレスチナ人の締め出しで、農業は危機的状況に

2024年7月19日(金)18時18分
高木由美子(本誌記者)
ガザ戦争でイスラエル農業が人手不足に

イスラエル中西部の農園 Protasov AN/Shutterstock

<ガザ戦争でパレスチナ人労働者の入国を禁止したことにより、外国人労働者に依存していた農業などが人手不足に見舞われている>

「まだまだ日本人が知らない 世界のニュース50」イスラエルは食料の大半を自給している国だ。ジャガイモやトマト、ニンジンなどの生産が多く、農産物の自給率は95%以上。水や耕地の不足を克服するため、効率的な生産システムを築き上げてきた結果だ。だが、その農業がいま立ち行かなくなっている。ガザ戦争で貴重な資源──パレスチナ人労働者を失ったからだ。

イスラエルは農業や建設業などの重労働を外国人労働者に依存し、なかでもヨルダン川西岸やガザから毎日通ってくるパレスチナ人労働者は約20万人に上った。だが戦闘開始以来、安全上の理由からパレスチナ人労働者の入国を禁止。アジア系労働者も戦火を避けて大量に帰国し、農業はたちまち人手不足に見舞われた。


苦境に陥った農家はイスラエル人のボランティアに頼るほか、インドやスリランカ、ケニア、マラウイなどから外国人労働者をかき集めている。新たな外国人労働者は高給と安定した労働条件に引かれてイスラエルに来たものの、実際には低賃金と重労働に苦しみ、虐待が蔓延しているとの報道もある。

人手不足が解消せず、外国人労働者が定着するかどうかも不透明なため、政府はついにパレスチナ人労働者の受け入れ再開についても議論を始めた。危険性を懸念する声も上がるが、食料生産も危険な状況には違いない。

ニューズウィーク日本版 世界最高の投手
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月18日号(11月11日発売)は「世界最高の投手」特集。[保存版]日本最高の投手がMLB最高の投手に―― 全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の2025年

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

エネルギー貯蔵、「ブームサイクル」突入も AI需要

ワールド

英保健相、スターマー首相降ろし否定 英国債・ポンド

ビジネス

ロシア、初の人民元建て国内債を12月発行 企業保有

ビジネス

再送-オリックス、純利益予想を上方修正 再エネの持
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 2
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入口」がついに発見!? 中には一体何が?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 6
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働…
  • 7
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 8
    「流石にそっくり」...マイケル・ジャクソンを「実の…
  • 9
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中