最新記事
サイエンス

同性間性行動は「非生産的」どころか生殖にも進化にも貢献していた──最新サル研究

Macaque Monkeys Frequently Have Gay Sex

2023年7月12日(水)20時23分
ジェス・トムソン

インドの森の中のアカゲザル Dmitry Rukhlenko-Shutterstock

<同性間性行動は、ヒト以外の動物ではまれな異常行動である」とする考えに異を唱える論文が発表された>

アカゲザルでは、同性間性行動はごくありふれた行動であり、集団としての生殖能力を高めてさえいるようだと、7月10日付けの「ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション」誌で発表された。

<動画>シカ相手に疑似後尾する日本のメスザル

この研究では、236頭のアカゲザルの個体群のうち、オスの72%が、別のオスを相手に同性間のマウンティングをおこなっていることがわかった。それに対して、メスを相手にしたマウンティングを試みたのは46%だった。

「およそ250頭のオスを調査したところ、そのうちの72%が同性間のマウンティングをおこなっていた。オスのほとんどはバイセクシャルだった」と、この論文の共著者ビンセント・サボライネンは本誌に話した。サボライネンは、インペリアル・カレッジ・ロンドンに付属するジョージナ・メイス・センター・フォー・リビング・プラネットの所長だ。

この研究では、プエルトリコのカヨ・サンティアゴ島に生息する半野生のアカゲザル1700頭の個体群に含まれるオス236頭を調査し、性的なマウンティング行動が試みられた事例をすべて記録した。その結果、性的接触をもったオス同士は、いさかいが起きた際に援護しあう傾向が強く、同性間性行動と「同盟的な絆」とのあいだに強い相関性があることが示された。

霊長類以外にも幅広く

「(同性間性行動は、)アカゲザルではオスでより多く見られるが、別の近縁種であるニホンザルでは、メスでより多く見られる」とサボライネンは述べている。

同性を相手にした交尾行動は、サル以外にも、アホウドリ、イルカ、バイソン、セイウチなど、幅広い種で観察されている。キリンを対象にしたある研究では、観察されたマウンティング事例の最大94%がオス同士のものだった。

今回の研究によれば、こうした同性間性行動は、世代から世代に受け継がれており、血統データからすると、この行動には6.4%の遺伝性があるという。つまり、この形質は自然選択による作用を受けており、単なるランダムな行動というよりは、進化によって生じた可能性があるということだ。

「同性間性行動は、脊椎動物に広く見られるが、今回の事例研究の独自な点は、1950年代までさかのぼる血統データを利用できたことだ。したがって、ヒト以外の脊椎動物で初めて、ある程度の遺伝性があると実証することができた。つまり、このサルにおいては、同性間性行動には遺伝的基盤があるということだ」とサボライネンは述べている。

今回の知見は、ヒト以外の霊長類において同性間性行動の遺伝的連関を示した初の証拠ということになる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:欧州で若者向け住宅購入の新ビジネス、価格

ワールド

焦点:道半ばの中国「社会保険改革」、企業にも個人に

ワールド

昨年の関税合意実施を米と確認、日本が不利にならない

ビジネス

米国株式市場=続落、ダウ453ドル安 原油高と雇用
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だったはずの中国が、不気味なまでに静かな理由
  • 2
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示さない
  • 3
    10歳少女がライオンに激しく襲われる...中国の動物園で撮影された「恐怖の瞬間」映像にネット震撼
  • 4
    「みんな一斉に手を挙げて...」中国の航空会社のフラ…
  • 5
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 6
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 9
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 10
    【WBC】侍ジャパン、大谷翔平人気が引き起こした球場…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 10
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中