最新記事

ウクライナ

悪夢の「ブチャ虐殺」生存者の証言...住宅街で起きた処刑、性暴力、拉致の一部始終

Just a “Tip of the Iceberg”

2022年4月13日(水)17時14分
エイミー・マッキノン(フォーリン・ポリシー誌記者)、メアリー・ヤン(フォーリン・ポリシー誌記者)

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチが3日に発表した報告書には、チェルニーヒウやハルキウ(ハリコフ)、キーウでロシア兵が行ったレイプや処刑、民間人への脅迫など、明らかな戦争犯罪が数多く記されている。

例えばロシア軍に占領されていたハルキウ州の村マラヤ・ロハンでは、31歳の女性が避難先の学校の校舎で、ロシア兵から繰り返しレイプされたと証言している。その校舎の地下室には約40人の民間人が避難していたと言う。

被害者による生々しい証言

「男は私に(オーラルセックスを)しろと言った」と、この女性は語っている。「男は私のこめかみに銃口を向け、あるいは顔に押し当てた。そして天井に向けて2度発砲し、もっと『やる気』を出せと私に迫った」(この女性の名は伏せられている)

ブチャでもある女性が、ロシア兵によって近隣住民と一緒に広場へ連行されたときの様子を証言している。携帯電話や身分証明書を調べられ、ウクライナの「領土防衛隊」に入っているかと問われた。やがて5人の若い男が引きずり出され、着ていたTシャツを頭にかぶせられた。そして1人が射殺された。

「心配するな」とロシア兵の隊長は言った。「おまえらはみんな正常だが、こいつは泥だ。われわれがここへ来たのは、おまえらから泥を落とすためだ」

ロシア軍の支配地域には入れないから、今は人権団体の調査員も目撃者の証言や証拠写真から残虐行為の記録をまとめるしかない。それでも、現時点で得られた情報は今回の惨劇のごく一部でしかないとみている。ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査員で、今回の報告書作成にも関与したユリア・ゴルブノワが言う。「事態の全容が明らかになるには何日も、何週間も、何カ月もかかるに違いない」

ウクライナのイリーナ・ベネディクトワ検事総長は4月3日のフェイスブックへの投稿で、ウクライナ当局はロシア軍が占領していたキーウ周辺だけで410人の遺体を収容し、既に140人の検死を終えたと述べている。

人口約3万6000人のブチャでこれほどの殺戮と破壊が行われていたのであれば、もう何週間もロシア軍に包囲されているマリウポリ(侵攻前の人口は50万弱)の惨状は想像を絶するものだろう。「いずれウクライナ軍がマリウポリを奪還したとき、どんな状況を目にするかと思うと恐ろしい」とゴルブノワは言う。

ウクライナ政府は、ロシア軍がマリウポリの住民4万人を親ロシア派の支配する東部2州やロシアに強制連行したと非難している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国務長官、ミュンヘン安保会議出席へ 米代表団50

ビジネス

アポロ、xAI関連の事業体に約34億ドル融資へ=報

ビジネス

米消費者の1年先インフレ期待低下、雇用見通し改善=

ワールド

トランプ政権、解雇された連邦職員の異議申し立て制限
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 2
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 3
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業績が良くても人気が伸びないエンタメ株の事情とは
  • 4
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「二度と見せるな」と大炎上...女性の「密着レギンス…
  • 8
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 7
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 8
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 9
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 10
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中