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ブレグジット

【要点整理】英議会でのEU離脱協議の内容 不透明感高まる離脱の行方

2019年1月24日(木)18時15分
真壁昭夫(法政大学大学院教授)※時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」より転載

英議会で離脱協定案が否決された後のテリーザ・メイ英首相(1月16日) REUTERS

英国内で欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)に関する議論が混迷を極めている。イギリス人の政治・経済の専門家にヒアリングしても、全員から「英国のEU離脱がどう進むかは分からない」との答えが返ってくる。メイ首相は再度の国民投票の実施や離脱期限の延期に否定的な考えを持っている。また、「合意なきEU離脱」(ハードブレグジット)の可能性も排除していない。そのため、超党派の議論もこう着している。こうした事実を考えると、これからブレグジットがどう進むか全く予想がつかない。

昨年12月、メイ首相はEUと合意した離脱協定案の議会採決を延期した。これは、英国内の利害調整が一段と難しくなっていることの裏返しだった。1月15日、英下院における採決の結果、賛成202、反対432という歴史的大差で離脱協定案は否決された。

この結果を受けてEU加盟国からは英国世論に配慮し、3月末の離脱期限を延期すべきだとの見解が出ている。同時に、EUは離脱案の修正には応じない姿勢を示している。今後の展開を考えるに当たっては、先入観を排して、英国議会におけるEU離脱協議の内容を客観的に確認することが重要だ。

混迷するアイルランド国境問題

昨年11月、メイ政権とEUは、離脱に関する内容をまとめた草案について合意した。その中でいくつかの重要な事項が決められた。まず、「移行期間」(英国がEUから離脱した後の経済環境や制度の急変を避けるための期間)が2019年3月29日から2020年末までと定められた。移行期間は、1度だけ延長が認められる。また、英国の対EU債務の解消(清算金)に関しては、390億ポンドで合意に達したとみられる。

最も重要なのが、合意案でEUがアイルランド国境問題に関する「安全策」(いわゆるバックストップ案)を定めたことだ。安全策とは、英国領である北アイルランドを一定の期間、EU関税同盟に残す措置を言う。

アイルランドと北アイルランド間の人とモノの自由な往来が保証されることは、北アイルランド情勢の安定に欠かせない。そのため英国もEUも、離脱後のアイルランド国境において国境管理(検問など)を避けることで合意した。

同時に英国にとって、EUが定める安全策が発動されることは、欧州委員会の影響下に残ることを意味する。安全策の運用に関する意思決定権はEUにある。英国は自らの判断で安全策から離脱することができない。

突き詰めて言えば、離脱協定案に従ってブレグジットが進むと、英国がEUから完全に離脱できないだけでなく、英国分裂の危機に直面する恐れもある。そのため、EU離脱派の与党議員らで構成されたメイ政権内では、安全策が明記されたEUとの離脱案を受け入れることはできないとの主張が増えた。

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