最新記事

中国経済

急成長の中国航空産業で不正部品疑惑 米国にも波紋

2017年10月19日(木)18時51分

不正疑惑を告発した元ムーグ社員のCharles Shi氏。上海で8月撮影(2017年 ロイター)

中国の航空機部品サプライヤーが、米飛行制御装置メーカー「ムーグ」に対して製造過程に不備のある部品を納品し、関連書類を偽造してムーグが認証していない工場に下請けを依頼していたと、米連邦航空局(FAA)の内部報告書が指摘していた。

ロイターが情報公開制度を利用して入手した2016年11月4日付の内部報告書は全9ページ。FAAはこの中で、影響がある部品273個が、米航空機大手ボーイングの旅客機777型機の翼の、スポイラーと呼ばれる着陸時の減速装置に装着されていると指摘した。装着されている機体数は明示されていなかった。

内部報告書は、問題の部品の名称や、装着された時期を特定していない。FAAとボーイング、ムーグは報告書の中で、航空機の安全性には影響はないとしていた。ロイターの問い合わせにも、メールで同様の回答を寄せた。

ムーグは、商用機と軍用機のフライト・コントロール・システムのサプライヤー。航空機業界では、航空機の安全のために重要な部品供給のトレーサビリティーや部品の品質は、厳しく管理されている。

今回の件で、直ちに安全性の問題が提起されるわけではない。

だが、世界最速で成長する航空産業を抱える中国が、外国の製造業者への依存を減らそうとするなかで、同国のサプライヤーや規制当局にかかっているプレッシャーの大きさを示している。

もちろん、これは中国だけの問題ではない。

日本の神戸製鋼所<5406.T>の株価は先週、大規模なデータ不正が明らかになり急落した。同社は、航空機や自動車に使われるアルミニウムや銅製品を供給しており、顧客は製品の安全確認に追われた。

急成長中の中国の航空宇宙産業は、競争の激しい世界市場に部品をより早く安価に供給することを狙っており、サプライヤーから引き合いが絶えない状態だ。米国の貿易統計によると、米国の航空宇宙産業への中国からの部品輸出は、2009年の約3倍の年間約12億ドル(約1350億円)になっている。

需要拡大により、それまで国有企業が主体だった航空機部品業界で、より小規模な部品メーカーの設立が加速している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エアバス、11月の納入数が減少 胴体パネル問題で

ワールド

台湾最大野党主席、中国版インスタの禁止措置は検閲と

ビジネス

ドイツ景気回復、来年も抑制 国際貿易が低迷=IW研

ワールド

台湾、中国の軍事活動に懸念表明 ロイター報道受け
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 8
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 9
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 10
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中