最新記事

安全保障

米政府のカスペルスキー製品使用禁止で、プーチンが反撃開始?

2017年9月14日(木)18時48分
エリアス・グロル

露カスペルスキー研究所の会長兼CEO、ユージン・カスペルスキー Paul Hanna-REUTERS

<米政府は、連邦機関に露カスペルスキー社のソフトが安全保障上の脅威だとして使用禁止を通達。カスペルスキーは巨額の損害を被り、プーチンは報復を匂わせる>

米政府は連邦政府機関に対し、ロシア情報機関とのつながりが疑われるロシアのセキュリティー大手、カスペルスキー研究所のソフトウェア製品の使用を禁止するよう通達を出した。イレイン・ドゥーク国土安全保障長官代理が9月13日に声明で発表した。

連邦機関は90日以内に、カスペルスキーのソフトウェア製品をネットワークから削除しなければならない。

2016年の米大統領選へのロシア介入疑惑の捜査が進むなか、米政府はカスペルスキーに対する監視を強めていた。ロシア政府がカスペルスキーを通じて、米政府のネットワークに侵入する恐れがあったからだ。

カスペルスキーは世界に4億社以上の顧客を抱えるウイルス対策ソフトの巨人。カスペルスキーの製品を排除するという米政府の決定は、最近の冷え切った米ロ関係を象徴している。米政府はロシアで最も成功したグローバル企業に数えられるカスペルスキーの業績に大打撃を与えた。米企業がロシア政府から何らかの報復を受けてもおかしくない。

カスペルスキー側は反論

カスペルスキーは、ロシア政府に顧客データを開示したことはないとして、米政府の疑いを否定している。米政府によれば、カペルスキーはロシア政府の命令に逆らうことができず、そうである以上アメリカの国家安全保障に対する脅威であるという。「ロシアの法令では、カスペルスキーはロシア連邦保安局(FSB)と連携しなければならないと定められている」と、ホワイトハウスのサイバーセキュリティー担当の大統領補佐官、ロブ・ジョイスは言った。「米政府として、こうしたリスクは容認できない」

カスペルスキーは米政府の決定に「失望した」とし、「根拠のない主張と不正確な仮定」に基づいた決定だと反論した。同社は、米政府はロシアの法令を誤って解釈していると主張する。ロシア政府に情報共有の大きな権限が与えられるのはインターネット通信サービスなどの企業だけで、カスペルスキーは対象外だという。

「カスペルスキーは、サイバー空間でのスパイ行為やサイバー攻撃でいかなる政府も手助けしたことがない。当社は一民間企業に過ぎない。地政学的な問題のせいで無実の罪を着せられるいわれはない」

米政府は今のところ、カスペルスキーがスパイ行為のために自社製品をロシア政府に使わせたという具体的な証拠は何も示していない。

カスペルスキーの幹部にはロシアの元情報機関職員がいるほか、同社はサイバー犯罪の捜査でロシア政府に協力したこともある。だが、そんなことはサイバーセキュリティーの業界では当たり前のことで、だから怪しいという理由にはならない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、金利据え置きで大方一致 方向性に見解の相違

ビジネス

シュナーベルECB理事「早期退任ない」、27年まで

ワールド

米民主一部議員、一般教書演説ボイコットへ 党派の亀

ワールド

ゼレンスキー氏、和平協議に不満 月内に次回協議の意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポーランドが「核武装」に意欲、NATO諸国も米国の核の傘を信用できず
  • 2
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 3
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方...勝利のカギは「精密大量攻撃」に
  • 4
    生き返ったワグネルの「影」、NATO内部に浸透か
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 7
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 8
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 9
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 10
    アフガニスタンで「対中テロ」拡大...一帯一路が直面…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中