最新記事

中国外交

日中戦争から一帯一路まで「パンダ外交」の呪縛

2017年7月4日(火)10時30分
楊海英(本誌コラムニスト)

世界のどの国に派遣されても、中国を代表するパンダは漢字2文字の名前で呼ばれる。特に日本では、この命名に違和感はないようだ。中国以上に中国史の年代や漢詩をたたき込まれる教育に慣れているからだろう。

「文化的植民地」日本のこうした友好の努力を当の中国は評価するどころか、「小日本」と軽蔑する。古代から中国に船をこぎ着けて漢籍を請うては持ち帰っていたのに、近代に入ってから西洋化して傲慢になり「侵略」までした、と中国は考えている。

【参考記事】香港返還20年 若者たちは中国への「愛国心」薄く

中国は日本を文化的に中国の下位国だと尊大に思っているのに、日本は構わずにパンダとその「主人」を過大評価する。漢文重視の教育を見直し、パンダ外交の呪縛を自ら解いていかないと、日本は中国の威圧的膨張にいつまでたっても対応できないだろう。

中国のパンダは忙しい。7月にドイツのハンブルクで行われるG20首脳会議に合わせて、6月にペアがベルリン動物園に送られた。2頭は15年間貸与され、毎年100万ドルが中国に支払われる。習が進める経済構想「一帯一路」は成功しているかどうか怪しいが、パンダは外交面でも経済面でも確実に中国のために働いている。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

[2017年7月 4日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

西欧の航空会社、中国他社より不利=エールフランスC

ビジネス

午前の日経平均は続伸し最高値、高市首相誕生への期待

ワールド

ブダペストでの米ロ会談、ハンガリーとの良好な関係背

ワールド

トランプ氏、中国との公正な貿易協定に期待 首脳会談
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 7
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 10
    若者は「プーチンの死」を願う?...「白鳥よ踊れ」ロ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中