最新記事

中国政治

中国の「テロとの戦い」は国際社会の支持を得るか

世界で相次ぐテロ事件を好機に、新疆での過激派摘発、ウイグル人の宗教・文化的弾圧を進めている

2015年11月27日(金)15時55分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

複雑な国際問題に 中国当局からの弾圧を逃れて推定3万人のウイグル人がトルコに亡命しているといわれ、中国政府はトルコを批判しているが(2015年7月、イスタンブール) Osman Orsal-REUTERS

「テロとの戦い」は複雑怪奇な連鎖反応を示している。

 10月31日のロシア機墜落、11月12日のレバノン・ベイルートでの連続自爆テロ、そして翌13日のパリ同時多発テロなど、相次ぐ事件は世界に大きな衝撃を与えた。欧州では難民受け入れの是非を問う声が高まったほか、フランス軍によるイスラム国への空爆、トルコによるロシア軍機撃墜、さらにはシリアの反政府武装勢力によるロシア軍ヘリコプターへの攻撃と連鎖反応を引き起こし、情勢はさらに混迷の度合いを増している。

 シリア、イスラム国、そして欧米の情勢に注目が集まるなか、中国も「テロとの戦い」に名乗りを挙げているのはご存知だろうか。中国の王毅外相は15日、G20首脳会合のために訪問したトルコで、新疆ウイグル自治区の過激派との戦いも世界的な「テロとの戦い」の一部であると発言し、国際社会に共同戦線の必要性を訴えた。世界を揺るがす「テロ」を奇貨として、中国は新たなプロパガンダを展開している。

自国民に火炎放射器、ウイグル人28人を"殲滅"

 人民解放軍の機関紙「解放軍報」は11月23日、「"反テロの先鋒"人民の平和を守る」と題した記事を掲載した。新疆ウイグル自治区の対テロ特殊部隊の戦いを生々しく描いたものだ。その一部を引用しよう。


 ちょうどこの時、トランシーバーに偵察情報が入った。テロリストの形跡を発見した、と!
 タカが獲物を発見したかのように、特殊部隊隊員たちは血をたぎらせた。暴徒らは断崖絶壁の洞穴に隠れている。攻めづらく守りやすい地形だ。幾度かの説得は無駄に終わった。催涙弾やスタングレネードが次々と打ち込まれたが動きはない。夕方となり空は次第に暗くなりつつある。
「火焔放射器を使え!」劉琳隊長の命令が下るや、一条の怒りの炎が洞窟に吸い込まれていった。隠れ家を失った10人あまりのテロリストどもが刀を手にし、凶悪な様相で特殊部隊に襲いかかってくる。「バン、バン、バン!」王聖小隊長は速やかに発砲し、あっという間に3人を撃ち倒した。その後、他の隊員と協力しテロリストを全滅させたのだった。

 この戦いの場所、時間について詳細は記載されていないが、おそらく11月上旬の新疆ウイグル自治区での山狩りに関するものだろう。9月にウイグル人が同区アクス地区の炭鉱を襲撃し、16人が死亡する事件が起きたが、その後、当局は大規模な山狩りを展開。自首した1人をのぞく、メンバー28人を殲滅したと11月20日に発表した。残党をすべて射殺したという最後の戦いを描いた記事である可能性が高い。

ニュース速報

ワールド

英首相に早期辞任圧力、離脱協定案巡り与党内で強い反

MAGAZINE

特集:ニュースを読み解く 哲学超入門

2019-5・28号(5/21発売)

トランプ現象、移民、監視社会、SNS...... AIも解答不能な難問にあの思想家ならこう答える

人気ランキング

  • 1

    日本の正社員の給与の約半分は40~50代前半の社員に支払われている

  • 2

    アメリカの衛星が捉えた金正恩「深刻な事態」の証拠写真

  • 3

    パリで過熱する日本ブーム 300万人が訪れた「ジャポニスム2018」の立役者たち

  • 4

    利他の心に立つ稲盛和夫が活用する京都の日本庭園「…

  • 5

    日本人の英語が上手くならない理由 『日本人の英語…

  • 6

    女性の体は、弱い精子をブロックする驚くほど洗練さ…

  • 7

    京都を愛したデヴィッド・ボウイが涙した正伝寺の日…

  • 8

    ロシア爆撃機がアラスカに接近、米戦闘機がインター…

  • 9

    「作り物」のクイーン賛歌は、結局本物にはかなわない

  • 10

    「ディズニーパークに遺灰がまかれている」という都…

  • 1

    29年前の「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」の容疑者が再犯 少年法見直しの議論は海外にも 

  • 2

    「人肉は食べ飽きた」と自首した男と、とんでもない「仲間」たち

  • 3

    「売春島」三重県にあった日本最後の「桃源郷」はいま......

  • 4

    アメリカがイランを攻撃できない理由──「イラク侵攻…

  • 5

    ジョンベネ殺害事件で、遂に真犯人が殺害を自供か?

  • 6

    女性の体は、弱い精子をブロックする驚くほど洗練さ…

  • 7

    現代だからこそ! 5歳で迷子になった女性が13年経て…

  • 8

    元TBSアナ久保田智子:不良だった私が東大に入るまで

  • 9

    トランプの言うことは正しい

  • 10

    日本の正社員の給与の約半分は40~50代前半の社員に…

  • 1

    徴用工問題で日韓が近づく危険な限界点

  • 2

    「英王室はそれでも黒人プリンセスを認めない」

  • 3

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、被害続発する事情とは

  • 4

    29年前の「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」の…

  • 5

    59歳の人気ランジェリーモデルは5年前まで普通のお母…

  • 6

    「売春島」三重県にあった日本最後の「桃源郷」はい…

  • 7

    現代だからこそ! 5歳で迷子になった女性が13年経て…

  • 8

    金正恩の「最愛の妹」身辺に異変か......「米朝決裂…

  • 9

    地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される

  • 10

    10%の食塩水1kg作るのに必要な塩と水は? 大学生が「%…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
広告営業部員ほか求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月