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「黒人が白人女性を誘惑」と因縁つけリンチ...アメリカを変えた殺人事件を描く映画『ティル』

Going Into the Fire

2022年10月20日(木)17時24分
H・アラン・スコット(ライター、コメディアン)

デッドワイラーにとって、この作品は「世界と対話する試み」だった JAMIE MCCARTHY/GETTY IMAGES FOR FLC

<1955年に起きた黒人少年惨殺事件を描いた映画『ティル』で、被害者の母を演じたダニエル・デッドワイラーが明かす「語り継ぐ決意」>

1955年にミシシッピ州で起きたエメット・ティル惨殺事件は、公民権運動の行方に決定的な影響を与えた。14歳の黒人少年が白人女性を性的に誘ったなどと因縁をつけられ、白人の男たちにリンチを受けて殺されたのだ。

息子の遺体を引き取った母親のメイミー・ティルは怒りと悲しみに震えながらも、あえて棺にふたをせず、変わり果てたわが子の姿を人目にさらした。おかげで事件は全米の注目を集め、差別撤廃を叫ぶ声が一気に広がった。

彼女こそ「公民権運動のレガシーの生みの親」だと、アメリカで公開中の映画『ティル(仮題)』でメイミー役を演じたダニエル・デッドワイラーは言う。「彼女の行動をきっかけに、不公正に目をつぶっていた人たちも抗議の声を上げ始めた」

■【映像】あまりに残酷に息子を殺された母の悲しみと怒りが歴史を変えた...映画『ティル』予告編

メイミー役は「これまで演じたなかで最も難しい役だった」と、デッドワイラーは語る。監督のシノニエ・チュクウともども「これはただの映画作り、ただのアート制作ではない、それを超えた重みを持つ仕事だと腹をくくった」と言う。いわば「世界と対話する試み」だ、と。

少年が殺されたのは「人種差別の肥だめ」のような町。母親は「火だるまにされるのを覚悟で勇敢にもそこに飛び込み、(差別の実態を)人々に知らせた。私たちは未来永劫、その恩恵を受け続ける」。

今も当時と同じく「とても暗い時代」だが、この映画を見て「そんな時代にも勇敢に、そして大胆に声を上げられることを知ってほしい」。

そう話すデッドワイラーに、本誌H・アラン・スコットがメイミー役への思いを聞いた。

◇ ◇ ◇


――この役を演じることになった経緯は?

正直、乗り気ではなかった。というより演じ切れるか不安だった。この事件がアメリカの黒人の歴史、さらにはアメリカの歴史に与えた影響を思うと......。考えに考え抜いた末、引き受けることにした。

――観客はメイミー・ティルについて何を学べる?

彼女には並外れた覚悟が求められた。歴史の流れを変える決断だった。彼女が行動を起こして訴え続けたおかげで、アメリカが変わった。

――個人の悲劇にとどまらないことを彼女は知っていた?

自分の子供に起きたことはほかの子供たちにも起きると思っただろう。二度とこんな悲劇が起きてはならないと。

――犯人たちが無罪となったことは観客に衝撃を与える?

今さら驚きはないと思う。白人によるリンチの実態はよく知られているから。ただ未来の世代のために、真実を語り継がなくてはならない。

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