最新記事
宇宙開発

燃焼試験失敗の「イプシロンS」...爆発までにたどった「詳しい経緯」が明らかに

2024年12月25日(水)18時55分
茜 灯里(作家・科学ジャーナリスト)
イプシロンSロケット燃焼実験

種子島宇宙センター竹崎局から撮影した試験画像(11月26日) 宇宙航空研究開発機構(JAXA)

<JAXAは海中に落下した一部を除く破片の回収を終え、圧力、画像、加速度、歪(ひずみ)、温度に関する試験データの分析結果を公開。これにより、爆発に至るまでの経緯が明らかになった>

JAXA(宇宙航空研究開発機構)は25日、今年11月に行われた開発中の小型固体燃料ロケット「イプシロンS」の第2段モータ燃焼試験中に爆発が発生したことについて、事象の詳細な経緯と調査状況を明らかにした。

爆発はJAXA種子島宇宙センター(鹿児島県)で11月26日に発生した。イプシロンSの3段構成のうち第2段のモータを約2分間燃焼する予定だったが、約49秒後に爆発した。機体や実験施設は損壊し、破片は海まで飛び散った。

今回は、海中に落下した一部の破片以外の回収を終え、圧力、画像、加速度、歪(ひずみ)、温度に関する試験データの分析結果を公開した。

燃焼試験では、①点火後約17秒から燃焼圧力は予測値に対して高い側に徐々にずれ始め、②約48.9秒で燃焼ガスのリークが原因とみられる燃焼圧力の下降が起き、③約49.3秒で後方の爆発に起因する圧力の急激な下降が生じたという経緯をたどった。加速度や歪(ひずみ)が後方から変動していることや画像の確認から、爆発はモータ後方で発生し、リークした燃焼ガスが引火したのではなく、圧力で容器が破壊したために起きたと考えられるという。

イプシロンSは2022年に運用を終了した「イプシロン」の改良型で、今年度内の初号機打ち上げを目指していた。昨年7月にJAXA能代ロケット実験場(秋田県)で行われた第2段モータ燃料試験で爆発が起きたため、対策を講じて今回再試験に臨んだが、2度目も失敗に終わった。事態を重く見たJAXAは岡田匡史理事/宇宙輸送技術部門長をチーム長とする原因調査チームを事故当日に発足させ、組織内外から有識者を参集し状況の把握・分析を進めている。

調査は、①~③の事象について個別に「故障の木解析(FTA)」を行い、もともとの設計に瑕疵(かし)はなかったか等ゼロ地点にも立ち返り、すべての要素を場合分けして徹底的に洗い出している。

編集部よりお知らせ
ニューズウィーク日本版「SDGsアワード2025」
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:発達障害の人々に広がるAI利用、「他者と

ビジネス

英シェル、第2四半期は32%減益 原油安響くも予想

ビジネス

石破首相、自動車業界と意見交換 感謝の一方でさらな

ワールド

マレーシア製品への新たな米関税率、8月1日発表=首
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 3
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 4
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 5
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 10
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中