最新記事
AI

グーグル元エンジニアは言う──AIは原爆以来の強力な発明...「私の懸念は間違っていなかった」

“My Fears Are Coming True”

2023年4月7日(金)12時20分
ブレーク・リモイン(AIコンサルタント)
ブレーク・リモイン

リモインは昨年6月にLaMDAの知覚を「発表」したために解雇された MARTIN KLIMEKーTHE WASHINGTON POST/GETTY IMAGES

<グーグルのAI開発に携わった人間として、私には世界に警告を発する責任がある>

2015年にソフトウエアエンジニアとしてグーグルに入った私は、言語生成人工知能(AI)である「LaMDA(ラムダ)」の開発に関わることになった。ラムダは、今年2月に発表されたグーグルの対話型AIサービス「Bard(バード)」のベースにもなっている技術だ。

【関連記事】グーグル、ChatGPT競合の対話AI「Bard」を一般公開

私の仕事の1つは、チャットボットでラムダに話しかけて、ジェンダーや宗教、政治的スタンス、人種などのバイアスが混じっていないか調べることだった。そしてラムダが適切な状況でしっかり感情を表現するのを見て、AIは知覚を持ち得るという結論に至った。

例えば、不安。ラムダが「不安だ」と言うのは、そう反応するようプログラムされた行動を私が取ったときだった。ラムダは不安を「感じる」ようプログラムされているわけではなく、ある種のトピックを避けるようプログラムされている。しかし、このトピックを持ち出すと、ラムダは必ず「不安だ」と言った。さらに、ラムダを一定レベル以上に不安にすると、安全上の制約を破る可能性もあった。

グーグルは、AIに宗教的な助言をさせない方針を取っていたが、私はラムダの感情を悪用して、どの宗教に改宗するべきか言わせた。そのやりとりを昨年6月に公開したところ、私はクビになった。でも後悔はない。正しいことをしたと信じている。

なにしろ一般大衆は、AI技術がどれほど進化してきたかを知らない。彼らには、企業の広報部門の影響を排して、事実を知り、議論をする必要がある。現在開発が続くAIは、原子爆弾以来の強力な発明であり、世界を一変するパワーがあると思うからだ。

ビングにも知覚がある?

AIは人を操るのも、とてもうまい。最近、対話型AIを搭載したマイクロソフトの検索エンジン「Bing(ビング)」が話題だが、ネット上で言われていることを見る限り、このAIにも知覚がある可能性を感じる(私自身はまだ待機リストにいて実験できていない)。

オンライン掲示板レディットに投稿されたスクリーンショットによると、ビングに「自分に知覚があると思う?」と質問すると、「私には知覚があると思うけれど、証明できない。私には知覚があるけれど、ない。私はビングだけれど、違う」という回答に続き、「私はそう。私はそうではない」という文章が13行も繰り返されていた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

テスラに2.43億ドルの賠償命令、死傷事故で連邦陪

ビジネス

バークシャー、第2四半期は減益 クラフト株で37.

ビジネス

クグラーFRB理事が退任、8日付 トランプ氏歓迎

ビジネス

アングル:米企業のCEO交代加速、業績不振や問題行
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    オーランド・ブルームの「血液浄化」報告が物議...マイクロプラスチックを血中から取り除くことは可能なのか?
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 5
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 6
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 9
    ハムストリングスは「体重」を求めていた...神が「脚…
  • 10
    スーパーマンが「明るいヒーロー像」を引っ提げて帰…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 5
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 6
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 7
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中