受賞企業7社 それぞれのサステナブルな挑戦【第3回SDGsアワード】
Here Are the Winners
(左の2人目から)「ニューズウィーク日本版SDGsアワード2025」を受賞したカネカ、三井不動産ホテルマネジメント、IT FORCE、アサヒバイオサイクル、OSGコーポレーション、Newtonプラス、生活クラブ連合会の各代表者。右端は本アワードの外部審査員を務めた蟹江憲史教授、左端は森田 PHOTOGRAPH BY SEIJI TONOMURA
今年度の「SDGsアワード」では64事例を、環境、社会、経済、脱炭素、地域課題の5部門に分類。参画企業も投票し、編集部と外部審査員の蟹江憲史・慶應義塾大学大学院教授が精査した上で受賞企業を選出、その中から最優秀賞も選んだ。
その選考とは別に、編集部と蟹江教授の研究室による共同研究を経て選出したのが「学生部門賞」、編集部が長期にわたり発展的に継続している取り組みを表彰するのが「特別賞」だ。
※今年度の「SDGsアワード」プロジェクトの報告記事はこちら:2030年までの達成は困難...それでも日本企業は「ビヨンドSDGs」と「三方良し」で勝つ?【第3回SDGsアワード】
Newtonプラス株式会社【最優秀賞】【脱炭素部門賞】

■「CO2を出さない」自動ドア
自然災害が頻発する日本では、停電リスクへの備えが急務。例えば自動ドアには、停電が起きると作動しないというリスクがある。この課題に「電気を使わない自動ドア」で立ち向かうのがNewtonプラス(東京都)だ。
自然の引力のみで稼働する自動ドア「ニュートン」の開発・製造・販売を行う。環境、安全、経済の三拍子を実現した技術を有し、災害時でも確実に稼働し、CO2を排出しない。
病院、自治体庁舎、学校、高速道路施設など40近い公共インフラに採用され、東京・渋谷の商業施設「ヒカリエ」にも導入された。
国際特許も取得しており、興味を示す海外企業にはノウハウも提供していくという。一般的な自動ドアは10年間で150万円以上の電気代と維持費がかかるのに対し、10年間で30万円にコストを抑えられるのも利点だ。
【選考委員会講評より】
環境的にも経済的にも優れた技術で、AI普及で電力需要が激化する今こそ必要な製品だ。その発想は、身近にイノベーションのヒントがあることも気付かせてくれる。
株式会社OSGコーポレーション【環境部門賞】

■万博で1200万回、マイボトル給水の啓発
日本の1人当たりプラスチック包装ごみ排出量は年間約32キロと、世界的に高い水準にある。この「脱プラスチック」の課題に対し、水に関する事業を展開するOSGコーポレーション(大阪市)は「使い捨ては、恥ずかしい」を掲げ、共創型サステナビリティ活動「ステハジ」プロジェクトを推進している。
魔法瓶メーカーからJリーグ、ラジオ局、自治体まで、500以上の企業・団体が参画。個人の行動変容につなげようと、マイボトルの持ち歩き啓発と、給水スポットの設置拡大に取り組む。
昨年の大阪・関西万博では、52台の無料給水スポットを会場内に設置。合計給水回数は1200万回を突破し、約1000トンに相当するCO2を削減した。
今後も国際イベントへの展開を視野に入れつつ、スポーツや音楽、教育の場へ取り組みを拡大させる。
【選考委員会講評より】
500以上の企業・団体に参画を促し、多様な業界と手を携えて社会を変える姿勢を特に評価した。SDGsの17の目標「パートナーシップで目標を達成しよう」に合致する取り組みだ。
IT FORCE株式会社【社会部門賞】

■介護タクシーの課題をDXの力で解決
移動手段を確保しづらい高齢者や障害者にとって、介護タクシーは重要なインフラ。だが予約の困難さなど多くの課題が存在する。
IT FORCE(東京都)は介護タクシー予約アプリ「よぶぞー」を開発。東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫と対応エリアを拡大しており、累計登録者数は1万人を突破した。
数回のタップで予約が可能で、条件に合致する介護タクシー事業者に一斉依頼できる。ドライバー評価機能や指名制度が事業者のサービス品質向上意識を高め、利用者満足度の向上にも寄与する。
また、福祉タクシー券の電子化を実現し、連携する自治体の事務負担を軽減。高齢者のデジタル抵抗を踏まえた多様な利用手段の提供を進め、地域交通の課題である交通空白地のニーズにも応える形で対応エリアを拡大していく予定だ。
【選考委員会講評より】
自治体との連動など、配車アプリを超えたプラットフォームを目指す姿勢を高く評価。今後はタクシー事業者の車両EV化を促すような脱炭素への貢献も期待したい。
アサヒバイオサイクル株式会社【経済部門賞】

■ビールの副産物で世界の農業改善に挑む
近年、世界で深刻化する食料問題。飲料大手アサヒグループが長年研究してきたビール製造時の副産物「ビール酵母細胞壁」を活用し、新たな農業資材を開発して問題解決に挑むのがアサヒバイオサイクルだ。
その農業資材は種子の発芽と根の健全な発達を助け、植物のストレス耐性と成長を高める効果を持つ。
特に、水田管理の労力とコストの大幅削減が期待できる「節水型乾田直播栽培」で高い有効性が示された。通常の水田栽培と同等の収量を確保しつつ、温室効果ガスの約65%削減に成功している。
海外展開にも注力し、ケニアでは食料問題解決に向け、ビール酵母資材を提供し節水型乾田直播栽培のプロジェクトに参画。ビール酵母資材には土壌を還元化する作用も確認されており、ブラジルでは荒廃地の再生を目的とした調査を進める。
【選考委員会講評より】
廃棄されていた副産物の活用法を模索した結果、廃棄時のCO2削減だけでなく、活用先での温室効果ガス削減にもつながった点を評価した。さらなる世界的な展開にも期待したい。
生活クラブ事業連合生活協同組合連合会【地域課題部門賞】

■太陽光発電でつくる人と金の新たな「循環」
50年以上にわたって生産者との協力体制を構築し、安心できる食の持続可能な国内生産に取り組んできた「生活クラブ連合会」。山形県北西部の庄内地域では「豊かな地域づくり」にも注力している。
1972年に地域の農協と連携し、コメの生産を開始。2019年には30年ほど利用されていなかった広大な砕石工場跡地に、約7万枚のソーラーパネルによる太陽光発電所を設立した。
発電した電気は庄内で利用され、余剰電力は生活クラブの組合員が共同購入する。収益は庄内の地域づくりや環境保全、「丸もち」文化保全にも活用される。さらには、地域づくりの新たな担い手にとの狙いから、23年に移住者と地域をつなぐ交流施設をオープンした。
高齢化と過疎化が進む日本。今後は長野県や栃木県、紀伊半島でも同様のプロジェクトを展開する計画だ。
【選考委員会講評より】
地域の電力を賄いながら、売電益を地域の環境・文化保全に活用するという素晴らしい循環を生んでいる。日本でも世界でもあらゆる地域に応用可能なモデルだろう。
株式会社カネカ【学生部門賞】

■海水中でも分解される新素材開発の挑戦
海洋に浮かぶプラスチックごみ。特にマイクロプラスチックによる生態系への影響が懸念されるなか、総合化学メーカーのカネカが30年に及ぶ研究の末、開発に成功したのが、カネカ生分解性バイオポリマー「Green Planet」だ。
この新素材の主成分であるPHBHは、土中だけでなく海水中でも分解される特徴を持つ。PHBHは当初わずかな量しか生産できなかった上、実用化への課題が山積みだった。しかし独自の高分子技術と合成生物学を駆使し、効率的な微生物育種・代謝制御技術を確立した。
Green Planetは100%バイオマス由来であり、環境負荷低減に貢献する上、石油由来の既存のプラスチックと同等の加工性・利便性を備える。
既に量産する工場が稼働しており、カトラリーや食品容器、農業資材などで採用が進んでいる。
【学生たちの講評より】
未来を担う学生ならではの視点として今後のポテンシャルも重視。積極的な製品展開に加え、資源調達の課題にも取り組んでいる点が持続可能な事業運営の観点から意義深いと考える。
株式会社三井不動産ホテルマネジメント【特別賞】

■障害者の創作活動を「仕事」に変える企画展
障害者が制作するアート作品は、芸術的価値が高く、障害への理解を深めるものとしても注目を集めている。しかし日本ではまだ認知度が低いのが現状だ。
そこで日本全国で数十軒のホテルを運営する三井不動産ホテルマネジメントは、多くの人が作品に接する機会を創出するべく、2021年からアート作品の展示・販売を行う企画展を自社ホテルで開催。海外からの来訪者を視野に入れ、展示物を日英2言語で表記する改善も進めている。
参加作家の人数や作品の販売額は年々増えている。25年度は56点が購入され、約112万円の販売代金は全て、支援団体を通じて作家の所属施設へ還元された。
これまで「趣味」として扱われることの多かった創作活動が「仕事」として認められるようになり、作家の自立や創作活動支援につながっている。
【編集部講評より】
地方に住む作家の発掘に尽力し、実際に販売総額と作家への金銭的還元が年々増加している点を高く評価。数十軒のホテルを運営しているという利点を生かした支援の拡大を期待したい。
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