最新記事
メンタルヘルス

認知症の「早期警告サイン」が明らかになる...「心理的幸福感」6つの要素との関係は?【最新研究】

Dementia: Scientists Reveal Possible New Early-Warning Sign

2024年8月30日(金)11時35分
パンドラ・デワン
記憶

geralt-pixabay

<軽度の認知機能障害を発症した人々は、心理的幸福感の低下を早く経験していることが判明。特に顕著だった要素とは?>

年齢を重ねるにつれて、目的意識や自己成長を感じられない──

この感覚が認知症の早期警告サインになる可能性、そして心理的な幸福感と記憶の衰えが密接に関連していることが最新研究でわかった。

【関連動画】認知症とは何か? を見る


 

2014年の「アメリカ疾病予防管理センタ(CDC)」のデータによると、65歳以上のアメリカ人の500万人以上が認知症を患っている。認知症にはさまざまな種類があり、最も一般的なものとしてアルツハイマー病がある。それは記憶能力、思考能力、意思決定能力の低下を特徴とする。

認知症の原因は完全に解明されていないが、遺伝要因と環境要因が関連していることがわかっている。

これまでの研究では、うつ病、心理的幸福感の低下、また記憶の衰えの間になんらかの関係性があり、それぞれが他の要因に影響を与える可能性が示唆されてきた。

今回、中国農業大学、スウェーデンのカロリンスカ研究所、およびシカゴのラッシュ大学医療センターの研究者たちが、認知機能が健全な910人の高齢者の認知機能の低下と認知症の発症過程における心理的幸福感の変化を14年間にわたって毎年追跡調査を行った。

心理的幸福感の6つの要素である「自己受容」、「自律性」、「環境制御力」、「人生における目的」、「積極的な他者関係」、「人格的成長」が測定され、軽度の認知機能障害や認知症の兆候も合わせて評価された。

その結果、軽度の認知機能障害を発症した人々は認知機能が維持された被験者と比較して、心理的幸福感の低下を早く経験していることが判明。

特に「人生における目的」が3年、そして「人格的成長」が6年と、認知機能の低下が顕著になる前からそれぞれの要素が低下していることがわかったのだ。

このことより、明らかな認知機能障害がないにもかかわらず、心理的幸福感の低下が将来的な脳機能障害の早期警告サインとなる可能性があると結論づけた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イランの報復攻撃にさらされるイスラエル、観光客4万

ビジネス

レアアース磁石確保に苦慮とフォードCEO=ブルーム

ワールド

カンボジア、タイとの国境紛争で国際司法裁判所に解決

ワールド

米ミネソタ州議員銃撃、容疑者逮捕と報道 標的リスト
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中