最新記事

ビットコイン

ビットコインで「資産を守れる」は本当? インフレの「経済論戦」から考える

2021年7月14日(水)18時11分
千野剛司(クラーケン・ジャパン代表)
ビットコイン(イメージ画像)

kanawatvector-iStock

<インフレ懸念が高まっているが、そもそも世界はなぜインフレに怯えるのか?【インフレと仮想通貨論(前編)】>

米国経済が新型コロナから立ち直る中、インフレ懸念が再燃しています。日本ではインフレに対して危機感を持つ人は多くないようですが、米国が牽引する形で世界的にインフレが加速する可能性があります。

インフレとは簡単に言えば、円やドルなど法定通貨の購買力が低下することを意味します。しかし、理屈では分かっていても、現代の多くの市場参加者は不健全なレベルのインフレを実際に体験していません。インフレ率が高まるその時に備えて、私たちは自分のお金をインフレからどのように守れば良いのでしょうか?

本稿では、そもそもインフレはなぜ起きるのか? どうやって測るのか? といった基本的な解説をした後、「インフレは有害なのかどうか」をめぐる経済学における有名な主張──ケインズ学派とオーストリア学派の主張を紹介します。

そして、インフレから自分の資産を守る方法として金や不動産など伝統的な資産と並んでなぜビットコインが有力なのか、という疑問に迫ります。

インフレとは何か?

インフレーション(略してインフレ)とは、モノ・サービス価格の上昇により法定通貨の購買力が低下することを指す経済用語です。インフレ率とは、一年間に平均的な世帯の生活費がどのくらい増えたかを測る指標であり、具体的には電気やガス、日々の食材の価格が過去と比べてどのくらい上昇したかを測ります。

一般的にモノ・サービスの価格は、他の条件が一定であれば、需要と供給の関係で決まります。ここでいう需要とはマネー供給量と同義であり、その増加がモノ・サービスの価格上昇要因となります。

インフレは、適切にコントロールされている場合は、無害に見えます。しかしコントロール不能になると経済に対して壊滅的な影響を与えます。アメリカのロナルド・レーガン元大統領は、かつてインフレについて「追い剥ぎと同じくらい乱暴で、武装した強盗と同じくらい恐ろしく、暗殺者と同じくらい致死率が高い」と表現しました。

以下の表は、最近の法定通貨とビットコインのインフレ調整済みの購買力を比較しています。過去10年ほどで、ドル、ユーロ、ポンドという主要な法定通貨の購買力が軒並み低下したのに対して、ビットコインは大幅に上昇したことが分かります。

210713kra_02.jpg

(出典:Kraken Intelligence「インフレ調整済みの購買力 米ドル、ユーロ、ポンドとビットコインを比較」)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、中東情勢を楽観 ユーロは2

ワールド

イラン核施設攻撃「中核部分破壊されず」と米情報機関

ビジネス

FRBバー理事、関税による持続的インフレを警戒 利

ビジネス

米住宅価格指数、4月は前月比‐0.4% 22年8月
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    細道しか歩かない...10歳ダックスの「こだわり散歩」…
  • 5
    都議選千代田区選挙区を制した「ユーチューバー」佐…
  • 6
    「子どもが花嫁にされそうに...」ディズニーランド・…
  • 7
    イスラエル・イラン紛争はロシアの影響力凋落の第一…
  • 8
    「温暖化だけじゃない」 スイス・ブラッテン村を破壊し…
  • 9
    「水面付近に大群」「1匹でもパニックなのに...」カ…
  • 10
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 10
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中