コラム

南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラング「江油写真館」が中国で流行る訳

2025年08月23日(土)19時56分
ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)
中国

©2025 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN

<この夏、南京事件を描いた映画『南京照祥館(写真館)』が中国で大ヒットしたが、同時に「江油照祥館(写真館)」というネットスラングが流行した。何を意味するのか>

この夏、中国でヒットした映画の1つは『南京照相館(写真館)』。南京事件(南京大虐殺)を描いた愛国映画だ。戦時中の南京にある「吉祥照相館」で、中国人の郵便配達人たちが日本兵の中国人殺害を撮影したフィルムを命懸けで歴史の証言として残したという物語である。日本軍の残虐シーンも多く描かれ、その結果、中国人の反日感情が高まった。

この『南京照相館』の興行収入が今年公開の中国映画で3位に躍り出た時、四川省の江油市という街で起きた、校内の集団いじめ事件が世論の注目を集めた。家庭が貧しく両親が障害者の14歳の少女がいじめっ子たちの標的となり、罵詈雑言、脅迫、暴力にさらされた。彼女は服を脱がされ、ひざまずかされもした。その様子を撮影した動画がネットで拡散し、少女の両親は何度も警察に土下座して助けを懇願したが、冷淡な警察はほとんど何も対応しなかった。


警察の対応に不満な江油市民が市政府庁舎前で抗議を行い、いじめっ子を厳しく処罰しようと呼びかけたが、警察はこれを暴力的に鎮圧した。このことが国外の中国語SNSで拡散し、激怒したネットユーザーはこの事件を『南京照相館』にちなんで「江油照相館」と呼んだ。「身近な弱者のためには声を上げる勇気もないのに、映画館では義憤が胸いっぱいにあふれた」映画の観客に対する皮肉だ。

プロフィール

風刺画で読み解く中国の現実

<辣椒(ラージャオ、王立銘)>
風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

<トウガラシ>
作家·翻訳者·コラムニスト。ホテル管理、国際貿易の仕事を経てフリーランスへ。コラムを書きながら翻訳と著書も執筆中。

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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