レバノンのアウン大統領は21日、トランプ米大統領とホワイトハウスで会談し、イランが支援する武装組織ヒズボラの武装解除と、イスラエル軍のレバノン撤退に向けた計画について協議した。レバノン大統領府によると、アウン氏は国家の安定を強化し、主権を全土に広げるためには、イスラエル軍のレバノン領土からの完全撤退が不可欠だと訴えた。

レバノンの国家元首による訪米は約20年ぶりで、トランプ氏とアウン氏にとっては初の会談となった。レバノン側によると、約2時間に及んだ会談では米国のレバノン軍支援、復興、経済再建、米国の投資についても話し合った。

イスラエル軍はレバノン南部の広い地域を占領し続けており、イスラエルの空爆を受けて数十万人のレバノン人が依然避難生活を強いられている。ヒズボラは、レバノン政府とイスラエルの直接交渉や、政府による武装解除に向けた取り組みを拒否している。

今回の会談は、アウン氏が置かれた微妙な立場を浮き彫りにした。同氏はレバノン南部からのイスラエル軍撤退を確保するためトランプ氏の協力を求める一方、米国とイスラエルからはヒズボラの武装解除を迫る圧力に直面している。

トランプ大統領は会談の冒頭で記者団に対し、レバノンが何十年にもわたって深刻な打撃を受けてきたとした上で、今後は米国が支援していくと言明。「レバノンに対し適切かつふさわしい敬意をもって対応する」と語った。

会談後にレバノン大統領府が発表した声明によると、アウン氏はトランプ氏に対し「イスラエル軍によるレバノン領土からの完全撤退が急務」と強調し、これを「安定を強化し、レバノン国家が自国の軍を通じてのみ完全な主権を及ぼすための不可欠な一歩」と位置付けた。

イスラエル軍はレバノン南部の「パイロットゾーン(試験区域)」プログラムの実施を20日に開始。パイロットゾーンは、ヒズボラとイスラエルの戦闘終結に向けた工程の一環として、イスラエル軍の段階的撤退とレバノン軍の展開のほか、ヒズボラの武装解除などを試験的に進める区域を指す。

会談終了後、トランプ大統領は交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、アウン大統領について「自国の変革に向けて目覚ましい仕事をしている」と評価。その上で「米国の全ての航空会社がレバノンへの直行便を運航できるよう、政権に指示する。他国も同様の措置を取ることを期待する」と述べた。

アウン氏は19日にルビオ米国務長官と会談し、米国の仲介で6月26日にレバノンとイスラエルが結んだ合意に沿って、イスラエルはレバノン南部からの撤退を開始すべきだと伝えた。この合意はヒズボラの武装解除、イスラエル軍の段階的撤退、両国間の平和的関係構築に向けた道筋をつけることを目的としている。

ただ、アウン氏がどのようにヒズボラを説得または強制して武装放棄させるかは依然として不透明だ。ヒズボラは1982年にイランの革命防衛隊によって設立されたシーア派組織で、かつてはレバノンの政治・軍事における支配的な勢力だったが、2024年のイスラエルによる攻撃と、同盟関係にあったシリアのアサド前大統領の失脚以降、影響力は低下している。

[ロイター]
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