コラム

NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショックの行方は?

2025年11月05日(水)14時20分

ところで、今回の市長選では、共和党の予備選に勝った公認候補が存在していました。カーティス・スリワ氏という人物で、長年「非武装の民間自衛団、ガーディアン・エンジェルス」を率いて市内の治安維持に貢献してきたユニークな存在です。ですが、スリワ氏は大昔からの「トランプ嫌い」で有名であり、それが災いしてか今回の選挙戦では全く票が伸びませんでした。

では、共和党の基礎票はどこへ行ったのかというと、マムダニ氏の対立候補で、元知事のクオモ氏(民主、今回は無所属)に流れました。トランプ氏自身がクオモ氏を支持するような言動を見せたし、クオモ氏もトランプ支持層へのアプローチを再三行っていました。つまり、治安維持を優先し、トランプ氏の姿勢にも与しない硬派のスリワ氏ではなく、共和党支持者の多くは、自由経済を支持するということでクリントン=オバマ路線を支持したのです。こうした連携は、今回だけの限定的な動きなのかは、注目していく必要があります。


これに対して、民主党内の動向は複雑です。まず、同じ左派系のバーニー・サンダース上院議員やAOCことアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員などはマムダニ氏の熱烈な応援団です。彼らは、今回の勝利に自信を深めて、もしかしたら大きな野心を抱くかもしれません。

民主党穏健派はマムダニを支持せず

具体的には、AOCが来年の中間選挙で下院から上院への鞍替えを狙って、現職のチャック・シューマー院内総務の引きずり下ろしにかかるかもしれないのです。その先にはAOC自身の大統領予備選への立候補にも待望論があります。

一方で、民主党の穏健派の立場は複雑です。自身が2年毎の選挙で勝っていかなくてはならないジェフリーズ下院院内総務や、改選の近いキャシー・ホークル知事は、若者の票が欲しいのでマムダニ支持に回りました。ですが、バラク・オバマ元大統領は最終的にマムダニ氏を支持しませんでした。

その結果として、クリントン=オバマ路線の穏健派はマムダニ氏を支持せず、市長選では予備選に負けたにもかかわらず無所属で出馬していたアンドリュー・クオモ前NY知事を支援したのです。民主党としては、完全に分裂した格好となりました。そのクオモ氏をトランプ氏とその支持層が支持した中でも、マムダニ氏は逃げ切ったのでした。この民主党内の確執が2026年の中間選挙、そして2028年の大統領選にどのように影響するのか、こちらも大変に注目されます。

【関連記事】
まるで赤狩り!トランプの左派弾圧指令でアメリカはさらに危険な国になる
もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商品を並べる仕事」しかない...英シティから警告の声

ニューズウィーク日本版 BTS再始動
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年4月7号(3月31日発売)は「日本企業に迫る サステナビリティ新基準」特集。国際基準の情報開示や多様な認証制度――本当の「持続可能性」が問われる時代へ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏が閣僚刷新検討 イラン戦争が打撃 選挙控

ワールド

商船三井のLPG船がホルムズ海峡を通過 日本関係2

ワールド

ドバイの米オラクル施設に迎撃破片が落下、負傷者なし

ワールド

トランプ政権による大学への人種データ開示命令を仮差
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 5
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 8
    中国は「アカデミズムの支配」を狙っている? 学術誌…
  • 9
    イラン戦争は「ハルマゲドンの前兆」か? トランプ…
  • 10
    満を持して行われたトランプの演説は「期待外れ」...…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 8
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 9
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 10
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story