コラム

バカバカし過ぎて正気を疑うトランプの選挙キャンペーン

2022年11月24日(木)16時00分

トランプは2024年大統領選の出馬を早々に宣言したが Jonathan Ernst-REUTERS

<献金額の14倍の「高額献金者」になれるという「1300%キャンペーン」など、常識では理解できないトランプ陣営の資金集め>

ドナルド・トランプ前米大統領が、投票日の2年も前の11月15日に、2024年の大統領選への出馬宣言をしたのは、大口の献金者を意識したものという解説がされていますが、そこにはトランプ独自の事情があるようです。

2015年以来トランプは多くのスーパーPAC(特別政治行動委員会)という政治資金管理団体を設立して、巨額の資金を集めてはテレビコマーシャル枠の購入や、SNSへの広告出稿を展開してきています。ですが、その多くが「不明朗な会計」を指摘されて使用できなくなっているのです。

そこで、2022年中間選挙では、「アメリカを再び偉大にする委員会」という新しいスーパーPACを立ち上げていました。中間選挙直前ということで、夏から秋にかけてこの団体は一部報道によれば2400万ドル(約33億円)を集めたそうです。ただ、そのほとんどは激しい戦いとなった選挙区に投入されており、すでに残額は底をついていると言います。

つまり、大統領に立候補して話題を提供し続けることで選挙資金を集め続けないと、資金繰りが苦しくなる事情があると考えられます。

アンケートから献金サイトへの誘導

その選挙資金集めですが、大口寄付者への工作とは別に、個人献金を集めるための「マーケティング」にも力が入っています。

具体的には、トランプのメーリングリストに入っている人には、選挙戦の要所要所で寄付の要請メールが送られるのですが、そこでは他の政治家には見られないようなアプローチがされています。

例えば、大統領選への出馬宣言が取り沙汰されていた10月には「トランプは2024年に出馬すべきか」というアンケートが送られています。タイトルだけを見ると、支持者の意見を聞いて出馬を決めるような印象を与えるのですが、実際の中身は違います。

内容は「2020年にバイデンが選挙を盗んだと思うか?」とか「過激で腐敗した左派はアメリカを壊そうとしているか?」といった一方的な「イデオロギーの踏み絵」になっていて、10近い質問に答えるうちに、民主党への憎悪が増していく仕掛けになっています。そして最後にはバナーが張ってあって、献金サイトに誘導されます。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イラン最高指導者ハメネイ師死亡、国営メディア確認 

ワールド

ドバイで空港と代表的ホテルが被害、イランの攻撃で

ワールド

石油・ガスメジャーや商社、ホルムズ海峡経由の輸送停

ワールド

IAEA理事会、2日に緊急会合 イラン攻撃協議 ロ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作曲家が「惨めでもいいじゃないか」と語る理由
  • 2
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 3
    「努力が未来を重くするなら、壊せばいい」──YOSHIKIが語った創作と人生の覚悟
  • 4
    【クイズ】世界で最も「一人旅が危険な国」ランキン…
  • 5
    ウクライナが国産ミサイル「フラミンゴ」でロシア軍…
  • 6
    がん治療の限界を突破する「細菌兵器」は、がんを「…
  • 7
    【クイズ】サメによる襲撃事件が最も多い国はどこ?
  • 8
    トランプがイランを攻撃する日
  • 9
    米・イスラエルの「イラン攻撃」受け、航空各社が中…
  • 10
    「本当にテイラー?」「メイクの力が大きい...」テイ…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 7
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 8
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 9
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 10
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story