Picture Power

エトナの民は火山と共に生きる

ETNALAND

Photographs by ALESSANDRO GANDOLFI

エトナの民は火山と共に生きる

ETNALAND

Photographs by ALESSANDRO GANDOLFI

溶岩が燃え盛る噴火口のそばで写真を撮る登山客たち

古代ローマの時代、そこは火の神バルカンの土地だった。イタリア南部シチリア島にあるヨーロッパ最大の活火山エトナ。かつてモンジベッロと呼ばれていたその巨大な山は、人々から畏怖の対象ではなく心のよりどころとして捉えられてきた。

地中海の真ん中にそびえ立つ「優しき巨人」は、何千年も人々を魅了。2013年には世界遺産にも登録された。

斜面を時折駆け降りてくる溶岩流は、麓に暮らす人々にとっては常に大きな脅威だ。聖アガタが殉教した翌年、エトナが噴火した時に彼の遺品であるベールをかざすと溶岩流が止まったという言い伝えも残る。

だが住民にとって、溶岩は「死」よりも多くの「生」を与えてくれるもの。カターニアなど麓の町の建物は火山がもたらす上質な玄武岩で造られ、石材は世界中に輸出される。火山灰は肥沃な土地を生み、オリーブオイルやワイン、ピスタチオ、アーモンド、アンズ、モモなど多くの農作物が実る。

観光業も盛んだ。毎年150万人がエトナ火山に登り、赤く燃え盛る溶岩が雪を溶かしながら流れゆく壮大なショーを楽しんでいる。


<撮影:アレッサンドロ・ガンドルフィ>
1970年、イタリアのパルマ生まれ。哲学とジャーナリズムを学び、イタリアを代表する日刊紙レプブリカに記者として勤務した後、フォトジャーナリストに転じる。主に欧州の雑誌で活躍中

Photographs by Alessandro Gandolfi-Parallelozero

<本誌2017年11月07日号掲載>



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