ニュース速報

ワールド

米、対中関税巡る対応見直し 台湾情勢受け=関係筋

2022年08月12日(金)13時15分

 台湾周辺での中国の軍事演習を受けて米政権当局者が対中関税を巡る考えを見直し、選択肢をいったん保留したと、事情に詳しい関係者らが明らかにした。写真は中国と米国の国旗。上海で昨年11月撮影(2022年 ロイター/Aly Song)

[ワシントン 10日 ロイター] - 台湾周辺での中国の軍事演習を受けて米政権当局者が対中関税を巡る考えを見直し、選択肢をいったん保留したと、事情に詳しい関係者らが明らかにした。

バイデン政権は物価高騰に対応するため、トランプ前政権が導入した対中関税の軽減に向けて数カ月にわたりさまざまな方法を議論してきた。

一部関税の廃止、通商法301条に基づく追加関税の可能性を巡る新たな調査開始、調達先が中国に限られている米企業を支援するための関税除外リスト拡大といった選択肢の組み合わせが検討されてきた。

11月の中間選挙を前にバイデン氏にとってインフレ抑制は大きな目標だが、ペロシ下院議長の台湾訪問に対する中国の反応を受け、政権高官は方針見直しを迫られている。緊張を高めると受け止められかねない措置を望まない一方、中国の敵対的な姿勢を受けて引き下がったとみられることは回避したい考えだ。

最新の状況に詳しいある関係筋は「台湾が全てを変えた」と述べた。

ホワイトハウスのシャーマ報道官は「大統領は台湾海峡における出来事以前の時点で決定を下しておらず、現在も決定していない。何も棚上げや保留にはしておらず、全ての選択肢がテーブルに残っている」と述べた。

レモンド商務長官はブルームバーグTVのインタビューで、決定に時間がかかっている理由を問われると「ペロシ氏の訪台後(地政学的状況が)特に複雑になっており、大統領は選択肢を吟味している。大統領は非常に慎重だ。米労働者の痛手になることをしないよう努めている」と述べた。

<除外リストが焦点に>

関税の軽減と強化に関する最も強力な措置が当面おおむね棚上げされるとみられる中、除外リストが焦点となる。

トランプ前政権は、重要工業部品や化学品を含む2200以上の輸入品目について関税除外を承認していたが、昨年1月のバイデン氏就任時にこれらは失効。タイ米通商代表部(USTR)代表が復活させたのはこのうち352項目のみで、業界団体や議員らは大幅な対象拡大を求めている。

<複数の要因>

台湾を巡る問題に加え、複数の要因が米政権の議論を複雑にしている。

関係者2人によると、米当局は関税の一部廃止検討に際し中国に同様の対応を求めたが、中国側はこれを退けた。

関係者の1人は、米国が対中関税の一部を単独で廃止する案は保留になったとし、中国が相互的な措置を取る意思を示さず、第1段階の通商合意も守っていないことが一因だと述べた。

在ワシントン中国大使館の報道官は、両国の経済・貿易関係は「厳しい」課題に直面していると指摘。「(ペロシ氏の)訪問は中米関係の政治的基盤を損ない、両国の交流と協力に大きな混乱を招くのは必至だ」とロイターに述べた。

*動画を付けて再送します。

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:9月株安の経験則に変調、短期筋に買い余力

ビジネス

ロシュ、米バイオ企業を最大35億ドルで買収へ 肝臓

ワールド

ドイツ銀行、第3四半期の債券・為替事業はコンセンサ

ワールド

ベトナム、重要インフラ投資に警察の承認義務化へ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中