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日本政府、国家備蓄石油の一部売却を決定 米と協調し数日分

2021年11月24日(水)17時12分

 日本政府は原油価格の上昇を受け、米国と協調して石油の国家備蓄の一部を放出することを決定した。岸田文雄首相が11月24日午前、発表した。写真は、波方国家石油ガス備蓄基地に入港している大型タンカー。2013年8月、愛媛県今治市で撮影(2021年 時事通信)

[東京 24日 ロイター] - 日本政府は原油価格の上昇を受け、米国と協調して石油の国家備蓄の一部を放出することを決定した。岸田文雄首相が24日午前、発表した。数日分の消費量にあたる数十万キロリットルを売却する。

岸田首相は記者団に対し、新型コロナウイルス禍からの経済回復には原油価格の安定が重要だと説明。「米国と歩調を合わせ、現行の石油備蓄法に反しない形で国家備蓄石油の一部を売却することを決定した」と語った。

産油国に増産を働きかけるとともに、農業や漁業など業種別の対策、ガソリンの急激な値上がりを緩和する措置も講じる方針も改めて示した。

松野博一官房長官は同日午前の会見で、国家石油備蓄の放出に関して「油種入れ替えを前倒しで実施することとした」と述べた。萩生田光一経済産業相は熊本で記者団に対し、数十万キロリットルの売却を行う考えを示した。経産省の担当者によると、これは、数日分の消費量に相当するという。

売却時期について、経産相は、精査中と述べるにとどめた。今後、できるだけ早く手続きに入り、入札を公示する。担当者によると、石油元売り会社や商社などの入札が想定されている。

<備蓄法の範囲内で協調、苦しい説明>

現行の石油備蓄法では、備蓄の放出は石油の供給が不足する事態や地震など国内の災害時に限定されており、価格上昇の対応策としての放出は想定されていない。今回、米国からの協調要請に対し、通常行っている使い難くなった油種を使い勝手の良い油種に入れ替える作業を前倒しで行うことで、対応した。

経産省の担当者は「あくまで油種入れ替え」を強調する。そのうえで、買い戻すまでは供給増となることで、理論的には「価格に対する効果はあり得る」と述べている。

油種の入れ替えは、通常、年に3―4回、1回20―30万キロリットル規模で行う。今年度の入れ替えは3回行い、予定はすでに終了していたが、来春にも行うはずだった入れ替えを、このタイミングに前倒ししたという。一方、売却後の買い戻しについては、2015年以降行われていない。ただ、日本での石油消費量は自動車の燃費改善や自動車離れ、省エネなどで減少傾向にあり、日数換算でみると備蓄は増えている格好だ。

米国が備蓄放出を発表した後、原油先物は1週間ぶりの高値に上昇した。米国をはじめ日本、インド、中国などが協調して行う石油備蓄放出による原油価格への影響は長続きしないとの見方が出ていた。

松野官房長官は備蓄放出決定後の原油価格上昇について「一つ一つの状況にコメントしない」と述べるにとどめた。

一方、24日アジア時間では、原油先物は下落に転じている。世界的な需給逼迫懸念が和らいだほか、前日に上昇した反動で利益確定の売りが出ている。

ロイター
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