ニュース速報

ワールド

アングル:中国の産金会社、西アフリカと南米で資産買い漁り

2021年03月06日(土)11時35分

3月4日、中国の産金各社が、なじみの薄かった西アフリカと南米で買収攻勢を掛け、ライバル勢よりも高い価格を提示して資産を買い漁っている。写真は2020年2月、ブルキナファソの金鉱山で撮影(2021年 ロイター/Anne Mimault)

[ヨハネスブルグ/香港 4日 ロイター] - 中国の産金各社が、なじみの薄かった西アフリカと南米で買収攻勢を掛け、ライバル勢よりも高い価格を提示して資産を買い漁っている。これまで買収の舞台になっていたオーストラリアなどの国々が中国企業に厳しい姿勢に転じたからだ。

リフィニティブのデータによると、中国の海外での鉱業部門の合併・買収は2020年に全体では減少した。しかし産金セクターは、金価格高騰で買収価格がつり上がったにもかかわらず、件数が19年の3倍に増えた。

銀行関係者や法律専門家は、オーストラリアやカナダ、米国が中国企業による買収への審査を厳格化する中で、中国からの投資を歓迎する新興国が今後も重点的な標的になり続けると予想している。

<世界的企業を目指す中国勢>

特に西アフリカと南米にある金資源が豊富な地域は、国内で資源減少に直面している中国企業にとって魅力的な物色の対象だ。こうした中国企業は事業を多角化し世界的企業になることを目指しており、買収対象は金に限らない。

法律事務所ハーバート・スミス・フリーヒルズ(香港)のパートナー兼アジア地区エネルギー部門責任者、ヒラリー・ラウ氏は「中国による鉱業部門のM&A(合併・買収)は過去12カ月間で2倍に増えた」と指摘。「金や鉄鉱石といった伝統的な標的と、チリウムやコバルト、グラファイトなどの新素材の間で、関心はほぼ2分されている」と述べた。

ヨハネスブルグに拠点を置く銀行の担当者は、中国の買い手が初めてアフリカで野心的に金分野のM&Aを進めようとしている、と話した。

中国の国有産金大手、山東黄金鉱業は昨年、ガーナの金鉱開発会社カーディナル・リソーシズを巡る9カ月間にわたる買収合戦で、ロシアのノルドゴールドに競り勝った。買収価格は1株当たり1.075豪ドル(約89.5円)で、ノルドゴールドの当初の提示を134%上回った。

一方、北極圏で金鉱山を運営するカナダの資源大手TMACリソーシズを山東黄金が買収する提案は、カナダ政府が昨年12月に国家安全保障上の懸念を理由に却下した。

山東黄金は取材に応じなかった。

中国の産金大手、赤峰黄金もガーナに進出しており、昨年12月に資源会社リゾリュートのビビアニ金鉱を買収する契約を締結した。

赤峰黄金はロイターへの声明で、オーストラリアやカナダといった先進国への投資について、資産が西アフリカや南米よりも10-30%ほど割高な上、発展途上国の鉱山会社の方がより速く買収手続きを進められるため、「積極的には行っていない」と説明した。

赤峰黄金は、中国企業が海外で資産を買収する際の有利な条件の1つとして国家による資金提供を挙げ、ビビアニ金鉱は「完全に競争力のある価格」で取得できたとの見方を示した。

<金相場上昇で買収額も膨張>

中国は南米でもM&Aを拡大している。中国の産金大手、紫金鉱業は昨年、5カ月の間にガイアナ・ゴールドフィールズと、コロンビアを中心に金鉱を運営しているコンチネンタル・ゴールドを相次いで買収した。

紫金鉱業はガイアナ・ゴールドフィールズ買収で、シルバーコープの提案を35%上回る価格を提示。コンチネンタル・ゴールド買収では29%のプレミアムを支払った。

紫金鉱業はこの報道に関するコメント要請に返答しなかった。

こうした買収価格は金相場の大幅な上昇を反映している。金は昨年8月に過去最高値を更新、今年は約25%値上がりしている。

カナダの産金大手エンデバー・マイニングは昨年11月にテランガ・ゴールド買収で5.1%のプレミアム支払いに合意するなど買収を積極的に進めたが、その後は株価が低迷している。

西アフリカの産金会社幹部は、中国企業は動きが速く、資金の調達が容易だと指摘。「企業価値の2倍を支払っても気にしない誰かと入札で競争しているようなものだ。彼らは買収を続ける」と語った。

リフィニティブのデータによると、中国の鉱業会社は昨年、中東・アフリカの産金会社・資産の買収に合計で4億5200万ドル(約488億1600万円)を費やした。これは中国の海外でのM&A支出総額の約60%を占め、同地域における市場シェアは14年以降で最高となった。リフィニティブのデータはアフリカと中東の数字を分けていない。

(Helen Reid記者、Kane Wu記者)

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ大統領、和平巡り米特使らと協議 「新たな

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中