ニュース速報

ワールド

イージス・アショア洋上案、建造費が陸上案の2倍以上に=関係者

2020年10月22日(木)14時47分

 10月22日、日本の防衛省が洋上への設置を検討している迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」について、もともとの陸上配備案に比べて2倍以上の建造費がかかる可能性があることが分かった。写真はイージス・アショア。提供写真(2020年 ロイター/Inquam Photos)

[東京 22日 ロイター] - 日本の防衛省が洋上への設置を検討している迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」について、もともとの陸上配備案に比べて2倍以上の建造費がかかる可能性があることが分かった。運用開始も最長3年遅れるという。事情に詳しい関係者が明らかにした。

北朝鮮が弾道ミサイル発射実験を繰り返す中、日本は秋田県と山口県の陸上自衛隊駐屯地にイージス・アショアを1基ずつ配備することを決定。要となるレーダーには米ロッキード・マーチン製を採用した。

しかし、発射した迎撃ミサイルのブースターを安全な場所に落下させられない恐れがあるとして、6月に計画を断念。レーダーは解約せずに流用し、リグや艦船に載せて洋上に設置する案を進めている。

同関係者によると、リグに設置した場合の建造費用は、秋田と山口両県に置く案と大きく変わらないが、艦船に搭載する場合は1基4000億円以上かかる可能性があるという。護衛艦や民間商船に載せるほか、イージス艦を増やす案がある。2県に建造する陸上案は1基およそ2000億円と見積もっている。

維持・管理コストも、陸上案より膨らむ。燃料費がかさむほか、海水対策費などが必要となる。リグや艦船自体を運用する人員も必要となる。運用開始も遅れる見通しで、「洋上に配備場所を移すことで、さらに2─3年必要になる」と、同関係者は話す。

防衛省はロイターの取材に対し、洋上案のこうした費用と配備年数は承知していないと回答。同省は年末までに陸上設置案の代替策を決定する方針だ。

ロッキードで海外事業を統括するトム・ローデン副社長は「日本が必要とするいかなるものもサポートする。テーブルの上にないオプションはない」と回答。「日本が自国の防衛に必要とする能力を提供することに注力している」と答えた。

防衛省はロッキードからレーダー2基を350億円で取得。これまでに約半額を支払った。当初は2025年以降に運用を開始する予定だった。

(Tim Kelly 日本語記事作成:久保信博)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏10月銀行融資、企業向けは伸び横ばい 家計

ビジネス

成長型経済へ、26年度は物価上昇を適切に反映した予

ビジネス

次年度国債発行、30年債の優先減額求める声=財務省

ビジネス

韓国ネイバー傘下企業、国内最大の仮想通貨取引所を買
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中