ニュース速報

ワールド

豪失業率、8月は予想外の低下 非正規中心の雇用拡大に不安も

2020年09月17日(木)17時14分

 豪連邦統計局が17日発表した8月の雇用統計によると、失業率は6.8%と、市場予想(7.7%)に反して低下した。就業者数も増えたが、パートタイム労働者が大部分を占めた。写真は外出制限で人気のないメルボルンの繁華街。7月に撮影。(2020年 ロイター/Sandra Sanders)

[シドニー 17日 ロイター] - 豪連邦統計局(ABS)が17日発表した8月の雇用統計によると、失業率は6.8%と、市場予想(7.7%)に反して低下した。就業者数も増えたが、パートタイム労働者が大部分を占めた。

失業率は、約22年ぶりの高水準だった7月の7.5%からさらに上昇すると見込まれていた。

就業者数は前月比11万1000人増で、増加幅は7月とほぼ同水準の大幅な伸びを示した。市場予想は5万人減だった。予想に反して就業者数が増加したことが、失業率の低下に寄与した。

新型コロナウイルス禍に再び見舞われ8月初めにロックダウンを実施したビクトリア州では、就業者数が4万2000人(1.3%)減少した。

8月の統計を受け、エコノミストらは失業率が豪中銀や財務省が予想するように10%まで上昇することはないとみている。

キャピタル・エコノミクスのアナリスト、マーセル・ティーリアント氏は「ビクトリア州の制限は年内に緩和される見込みで雇用は拡大し続けるだろう」と述べた。

ただ8月の就業者数増加の主因はパートタイム採用の増加(7万4800人増)。労働市場にはなおかなりの緩みがあることを示した。

また、職には就いているが、もっと長く働きたいと考えている不完全就業者の割合は11.2%で、前年8月を2.7%ポイント上回った。

BISオックスフォード・エコノミクスのチーフエコノミスト、サラ・ハンター氏は、労働参加率の低下や、有効活用されていない労働力の割合の上昇を踏まえると、失業率の低下はパンデミックの影響を実態より軽微にみせていると指摘。雇用回復局面では、その2項目が反転する必要があると述べた。さらに労働市場の緩みは少なくともあと1年は賃金の伸びを抑える要因になるとの見方を示した。

<若年層にしわ寄せ>

若年層(15-24歳)の失業率は20%付近と、全国平均の3倍以上に達している。2008/09年の世界的な金融危機の際は10-12%だった。

パーペチュアルの投資戦略トップ、マシュー・シャーウッド氏は「政策で若年層の失業問題に対処しなければ、こうした人々が新型コロナの忘れられた被害者になる恐れがある」と指摘した。

シドニーのウーロンゴン大学で会計学を専攻するあるインド人留学生は、5月にレストランでのパートタイムの仕事を失い、現在はウーバーイーツの配達員として働いている。「仕事は多くなく、20豪ドル(14.6ドル)稼ぐために、レストランの外で何時間も待たされることがある」という。

8月に増えた雇用の多くは、こうした個人事業主が中心で、労働時間は0.1%しか増加していない。

ドイツ銀行のエコノミスト、フィル・オドノヒュー氏は「新たに職を得た労働者の多くは、労働時間が少ないと推測できる。今回の雇用統計は良い内容とは言えない」と述べた。

新型コロナで特に打撃を受けた小売り・接客業は、若年層の労働者の比率が高く、これも若年層の失業率を押し上げる一因となっている。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ガザ地区最大都市ガザ市に地上侵攻 国防

ワールド

米、自動車部品に対する新たな関税検討へ 国家安保上

ビジネス

米8月小売売上高0.6%増、3カ月連続増で予想上回

ビジネス

米8月製造業生産0.2%上昇、予想上回る 自動車・
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがまさかの「お仕置き」!
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 8
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 9
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中