ニュース速報

ワールド

日本、イージス・アショア配備再開も 海上や沿岸に発射台設置案

2020年07月10日(金)18時21分

 7月10日、配備手続きの停止を決めた迎撃ミサイルシステム、イージス・アショアについて、日本政府が再び計画を進める可能性があることが明らかになった。写真はルーマニアに配備された米軍のイージス・アショアの建屋。2016年5月、デベセル空軍基地で撮影(2020年 Inquam Photos/ロイター)

Tim Kelly

[東京 10日 ロイター] - 配備手続きの停止を決めた迎撃ミサイルシステム、イージス・アショアについて、日本政府が再び計画を進める可能性があることが10日、明らかになった。関係者によると、レーダーと発射台を別々の場所に設置し、ブースター落下の危険性を取り除くことを検討しているという。

河野太郎外相は6月中旬、迎撃ミサイルのブースターを安全に落下させることが困難などとして、イージス・アショアを山口県と秋田県に配備する手続きを停止すると発表した。

しかし、事情に詳しい同関係者によると、日本政府はロッキード・マーチン製のレーダーを取得する契約を解除していない。米政府の提案に基づき、他の場所に配備が可能か、技術的な調査を進めることを検討している。

「契約をそのままにして、装備を活用したいと考えている」と、同関係者はロイターに語った。

ブースターが落下しても周囲に危険が及ばないようするため、レーダーと発射台を別々の場所に設置。レーダーが捕捉した情報に基づき、海上に造ったプラットフォームや沿岸部から迎撃ミサイルを発射することなどが考えらえるという。海上自衛隊が運用するイージス艦からもミサイル発射は可能だ。

いずれを選択しても、イージス・アショアの配備は中国とロシアの反発を招きかねない。新型レーダーはイージス艦が搭載する既存のものの3倍の能力があるとされる。中国とロシアの奥地まで見えるようになることから、両国は日本が配備することに反対してきた。

中谷元・元防衛相はロイターの取材に対し、航空自衛隊のレーダー基地が全国に28カ所あり、そのうち2カ所にイージス・アショアのレーダーを設置することが可能だと指摘。発射台は別の場所に配備できるとした。

与党・自民党はイージス・アショアの配備手続き停止を受け、新たな防衛体制を議論。中谷氏は他の防衛相経験者とともに、検討会で話し合いを進めている。

日本政府は国家安全保障会議(NSC)で安保戦略を見直す方針で、敵基地攻撃を含め、さまざまな選択肢を検討していく。

(取材協力:竹本能文、久保信博)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

和平交渉は「 真の結果に近づいている」=ゼレンスキ

ビジネス

インタビュー:M&A収益1000億円へ上積み、クロ

ワールド

米海軍、最大級の新型戦艦建造へ トランプ氏発表

ビジネス

過度な為替変動には断固たる措置、介入はフリーハンド
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中