ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏6人の側近、対中強硬へ足並み 香港が試金石

2020年05月30日(土)08時03分

トランプ米大統領の中国問題アドバイザーたちは長いこと、強硬姿勢を推す陣営と、慎重な関与を提唱する向きとに分かれてきた。だが、新型コロナウイルス危機が影を落とす中、側近たちはより強硬なアプローチで足並みをそろえつつあるように見える。写真は中国への厳しい姿勢で知られるポンペオ国務長官(左)と、穏健派のムニューシン財務長官。1月10日、ワシントンのホワイトハウスで撮影(2020年 ロイター/Kevin Lamarque)

[ワシントン 24日 ロイター] - トランプ米大統領の中国問題アドバイザーたちは長いこと、強硬姿勢を推す陣営と、慎重な関与を提唱する向きとに分かれてきた。だが、新型コロナウイルス危機が影を落とす中、側近たちはより強硬なアプローチで足並みをそろえつつあるように見える。

中国政府による香港への国家安全法導入の提案が、その試金石になるだろう。トランプ氏の側近が強硬意見で一致しつつあることが、米政府としての対応にどう影響するかが焦点になる。国家安全法を巡っては香港で民主派の抗議活動が再燃している。

トランプ氏はこれまで、対中問題の強硬派と慎重派の間で揺れ動いてきた。しかし今回は、中国政府がさらに法案を進めた場合、1)香港に通商面などで「特別な地位」を与えて優遇する措置を維持するのか、2)香港が世界の金融センターたるのを助けてきた同措置を停止するのか、3)はたまた対象を限った経済制裁ないし関税といったより緩やかな措置を取るのか、を決断しなければならない──。

トランプ氏が大変な労苦を取っている対中通商協議も、こうした中では宙ぶらりんになる可能性がある。

米政府の元職や現職の当局者、議会筋の話では、トランプ氏が11月の大統領選で再選を目指す中、側近たちは香港問題を含め、中国に圧力をかける必要性があるとの方向に意見を合わせるようになっている。米世論調査は米有権者の反中感情の高まりを示している。

ある元高官は「かつては関税についても冷静で、中国が世界第2位の経済大国であることを理解している伝統的な自由市場主義者がいた。その一方で、戦略的な国家安全保障を訴える補佐官らアドバイザーがいた。彼らの間ではっきりと線が引かれていた」と指摘。しかし現在は、「大半の高官が今こそ中国に対し強硬姿勢を取るべきとして歩調を合わせるようになっている」と述べた。

他方で、それほど確信が持てない向きもいる。香港の民主派ビジネスマンの黎智英(ジミー・ライ)氏が設立したネクスト・メディアの米国責任者マーク・サイモン氏は「昨今、米政府から一致したメッセージを得るのは難しくなっている」と語った。

トランプ氏の判断を形作るアドバイザーは次のような面々だ。

◎ポンペオ国務長官

ポンペオ氏は対中強硬派の公式な顔となっている。トランプ氏に忠誠を誓う同氏は、香港の管理を強めようとする中国政府の主張に米政府が何らかの対応をする上で、中枢の役割を担う可能性が高い。ポンペオ氏は国家安全法の動きを香港の高度な自治の「死を告げる鐘の音」と表現した。米国務省は、香港が高度の自治を維持しているかどうかについて、米議会に報告書を提出する義務がある。

◎オブライエン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

オブライエン氏は前任のボルトン氏よりも中国問題を重視している。トランプ氏の意向に反しないよう注意しつつも、対中批判の論客となった。オブライエン氏は24日、香港に国家安全法が導入された場合、中国が米国の制裁に直面する可能性があることを示唆する最も露骨な威嚇を行った。

◎ポッティンジャー大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)

ポッティンジャー氏は元ジャーナリストで海兵隊出身。新型コロナウイルスの感染流行を巡る情報開示で中国を真っ先に非難したトランプ政権メンバーの1人。中国に対する攻撃的なアプローチの主役とも言える。同氏の中国不信は同国でのジャーナリスト体験に根ざしている。スパイとされ、痛い目に遭わされたのだ。

ポッティンジャー氏はアジア担当の顧問としてトランプ政権入りし、その後に大統領副補佐官に任用された。元政権高官によると「オブライエン氏はどんな人物も副補佐官に選ぶことができたのに、よりによって対中タカ派のポッティンジャー氏を選んだ」。

◎ムニューシン財務長官

ムニューシン氏は長いこと、対中穏健派として発言してきた。しかし中国の新型コロナ対応に圧力が高まる中、同氏はより強硬な措置も辞さない兆候を見せるようになっている。その中には中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ・テクノロジー)への輸出規制も含まれる。香港問題を巡っては同氏は依然、市場の混乱を回避するため慎重な対応を訴える可能性がある。同氏はトランプ氏の娘婿のクシュナー大統領上級顧問に歩調を合わせることが多い。

◎カドロー国家経済開発会議(NEC)委員長

カドロー氏はこれまでは中国に、より慎重な姿勢を取ってきた。しかし今月になって、米連邦政府職員の年金運用機関に対し、特定の中国企業への投資計画を中止するよう求めた。自由市場主義者たるカドロー氏が、今回の香港問題でどう助言するかどうかは明らかでない。

◎ナバロ大統領補佐官(通商政策担当)

著書「中国による死」や同名のドキュメンタリー映画で悪評を得たナバロ氏は、トランプ氏がしばしば耳を傾ける人物としても知られる。香港問題を巡り、中国を厳しく罰するよう圧力をかけると見込まれている。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、和平巡る進展に期待 28日にトラン

ワールド

前大統領に懲役10年求刑、非常戒厳後の捜査妨害など

ワールド

中国、米防衛企業20社などに制裁 台湾への武器売却

ワールド

ナジブ・マレーシア元首相、1MDB汚職事件で全25
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中