ニュース速報

ワールド

英とEU、「最低限の協定」でも交渉は複雑 日程厳しく=外交筋

2020年01月24日(金)16時04分

 1月24日、1月末に欧州連合(EU)を離脱する英国は、EUと将来の関係について協議し、新たな協定の締結を目指す。写真は昨年10月撮影(2020年 ロイター/Dado Ruvic)

[ブリュッセル 23日 ロイター] - 1月末に欧州連合(EU)を離脱する英国は、EUと将来の関係について協議し、新たな協定の締結を目指す。欧州の外交筋の間では、「最低限の協定」でさえも複雑な交渉を要するうえ、交渉時間がほどんどなく、結局は年末に「合意なき離脱」と同じ状況に直面する可能性も排除できないとみられている。

「最低限の協定」にも、まずは新たな自由貿易協定(FTA)が含まれなければならない。

EU離脱後、直ちに移行期間と呼ばれる激変緩和措置が今年12月末まで適用される。これにより英国とEUの通商関係は離脱前の状態が維持され、急激な環境の変化は回避される。この間に、英国とEUは新たなFTAの締結を目指す。

ジョンソン英首相は、移行期間の延長は行わないという強気の姿勢を崩していない。協定案の翻訳作業や批准手続きなどにかかる時間を踏まえると、10月半ばまでには合意を成立させる必要があり、スケジュールは相当厳しい。

ある外交官は23日、今後数カ月、EUと英国の交渉はほとんど進まないだろうとの見方を示し、「EUでは通常、本当の危機に陥らないと何も動き出さない」と話した。

協定は航空、輸送、漁業などの分野をカバーする必要があるが、とりわけ漁業に関しては、離脱後にEUの漁船が英国の領海で操業できなくなるため、英国が交渉で優位に立つ可能性があるとみられている。

短期間のうちにまとめられるのは「最低限の協定」にとどまるため、その他の項目は後で交渉し、協定に加えればいいとの考えを複数の外交筋が示している。

あらゆる分野について100以上の合意を盛り込んだスイスとの協定の二の舞は避けたいというのがEUの本音だ。交渉に関与しているEUの外交官の1人は、2020年の末までに1つの条約を締結し、あとから追加の条約を付け加えられるような柔軟性を持たせるという考え方もあると語った。

EUは、離脱した英国が労働基準や環境基準を引き下げたり、あるいは一部の産業に補助金を与えたりすることでEUの競争力が低下することを懸念している。

こうした事態を避けるためEUは、英国と結ぶ条約に労働基準や環境基準などを後退させないことを確約する条項を加えるとともに、EUの基準が変更された場合に英国のルールの再調整を検討する共同委員会を立ち上げたいと考えているという。

あるEUの当局者は「英国のルールがEUのものと調和していればいるほど、英国はEUの単一市場にアクセスしやすくなる」と語った。

英国が労働基準や環境基準を引き下げたり、減税したりするようなことがあれば、EUは関税を発動することで英国がEUの単一市場に容易にアクセスできないようにすればいいと外交筋は指摘している。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...その正体は身近な「あの生き物」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 8
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 9
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 10
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中