ニュース速報

ワールド

英首相、EU離脱後の移行期間延長阻止へ 貿易協定締結迫る

2019年12月18日(水)00時34分

 12月17日、ジョンソン英首相(写真)は、欧州連合(EU)離脱後の移行期間について、2020年以降への延長を阻止する法案の成立を目指す。写真はロンドンで16日撮影(2019年 ロイター/Hannah McKay)

[ロンドン 17日 ロイター] - ジョンソン英首相は、欧州連合(EU)離脱後の移行期間について、2020年以降への延長を阻止する法案の成立を目指す。これにより、EUに来年末までの包括的な貿易協定締結を迫る狙いだ。

政府高官は17日、「われわれは政権公約で移行期間を延長しない方針を明確にした。離脱協定法案では、政府が延長に合意することを法的に禁止する」と述べた。

英国は来年1月31日のEU離脱が予定通り実現した場合、その後は移行期間に入り、EUと新たな貿易協定締結に向けた交渉を行う。この移行期間は現行のルールでは2022年末まで延長が可能だが、延長を阻止する法案が成立すれば、交渉期間は10─11カ月となる。

ジョンソン首相の報道官は「極めて明確な日程に基づき、英国とEUは貿易協定締結に向けた交渉を進めていくことが可能だ」と述べた。

また、報道官によると、ジョンソン首相とフォンデアライエン欧州委員長はこの日電話会議を行い、期日までの貿易協定締結に向けて活力的に取り組んでいく方針で一致した。

英国は可能な限り早期に交渉を開始する考えを示す一方、EU側は3月までに開始したいとしている。

先の英総選挙で与党・保守党が過半数を大きく上回る議席を確保したことから、ジョンソン首相には必要に応じて法を修正する柔軟性がある。しかし、EUはこれまでに、包括的な貿易協定の締結にはより多くの時間を要すると警告しており、ジョンソン氏にはEU側をけん制する狙いがあるとみられる。

EUの通商担当高官のサビーヌ・ウェイアンド氏は「すべてのシグナルを踏まえ、英国が移行期間を延長しない方針を真剣に受け止めることは賢明で、それに備える必要がある」とし、「2020年末までに合意に至らなければ、交渉は再び崖っぷちの状況に陥るだろう」と警鐘を鳴らした。

ウェイアンド氏は、英国のEU離脱後、欧州委は迅速に交渉を開始する用意があり、優先課題は明確と述べた。

ただ、専門家の間からは、1年弱の期間で包括的な貿易協定の交渉を完了させることは困難との指摘も聞かれる。

英国とEUが将来の関係について合意できず、移行期間も延長されなければ、英・EU間の貿易は世界貿易機関(WTO)の規則に沿って行うことになり、企業にとって重荷となる。

EUは英との貿易交渉で、環境・労働基準や政府補助金などを焦点にする見込みだ。

英国は、米国との貿易交渉で農業や食品の基準緩和を求められる見通しだが、EUにとってこれは超えられない一線だ。英国が規制緩和に応じれば、EUは域内の生産者を守るため、英国によるEU市場へのアクセスを制限することになる。

17日の取引で、ポンドは対ドルは1.35%安の1.3154ドルと、総選挙で与党保守党の勝利が確定する前の水準で取引された。

*情報を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、月内の対インド通商交渉をキャンセル=関係筋

ワールド

イスラエル軍、ガザ南部への住民移動を準備中 避難設

ビジネス

ジャクソンホールでのFRB議長講演が焦点=今週の米

ワールド

北部戦線の一部でロシア軍押し戻す=ウクライナ軍
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に入る国はどこ?
  • 4
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 5
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 6
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 7
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「デカすぎる」「手のひらの半分以上...」新居で妊婦…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「軍事力ランキング」で世界ト…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 7
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 10
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中