ニュース速報

ワールド

アングル:原油市場は先物急伸、現物が低迷 調整危惧する声も

2018年05月17日(木)10時45分

 5月15日、原油市場は中東情勢の悪化などを背景に先物相場が約3年半ぶりの高値を付け、年内に90ドルまで上昇するとの予想すらある。仏ニースのガソリンスタンドで2014年12月撮影(2018年 ロイター/Eric Gaillard)

[ニューヨーク/ロンドン/シンガポール 15日 ロイター] - 原油市場は中東情勢の悪化などを背景に先物相場が約3年半ぶりの高値を付け、年内に90ドルまで上昇するとの予想すらある。ただ、足元の基礎的諸条件をより良く反映する現物相場は低迷し、先物との価格差が開いており、市場は近く調整に見舞われるのではないかと危惧する声も聞かれる。

原油はこの数週間、トランプ米大統領がイラン核合意破棄を打ち出したことなどで上昇。北海ブレント先物が一時79ドル台と2014年11月以来の高値を付け、米WTI原油先物も72ドルに迫った。

パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)のコモディティ・ポートフォリオ・マネジャー、グレッグ・シャレノー氏は、原油はイランからの供給が細れば需給が一段と引き締まり、先物は近いうちに80ドルを突破すると予想した。

ブレントが10月末までに90ドルを付けると見込むオプション取引の建玉は2130万バレル相当と過去最高を記録。WTIが6月半ばまでに85ドルを付けると見込むオプションも1万4000枚強と過去最高だ。

ICAPのエネルギー先物ブローカー、スコット・シェルトン氏は、原油高を見込むポジションが組まれたのは地政学的な情勢の不安定化だけでなく強い需要が原因だと指摘する。

しかし現物市場は様相が先物とは異なり、油価の先行きに懐疑的だ。トレーダーによると、米国の原油輸出が日量200万バレルを超えたため一部の市場は需給が飽和状態で、指標原油の価格は調整の機が熟しているという。

中国系製油所のトレーダーは「先物はファンダメンタルズとのかい離が大きい。20ドルの調整があっても驚かない」と話す。

油質が米国産と近く、欧州や中南米で競合するナイジェリアやアゼルバイジャン産の原油は米国産との競争激化で販売が落ち込んでいる。

現物は先物の急伸を尻目に価格が低迷。ウラル原油の北海ブレントに対するディスカウントは7年ぶりの水準に拡大し、カザフCPCブレンドもブレントとの価格差が2012年半ば以来の水準に広がった。

また米市場では主要油種が、パイプラインの輸送能力の不足によって供給が阻まれたことが嫌われて価格が下がり、指標に対するディスカウントが3年ぶりの水準に開いた。

中国の製油所が定期的なメンテナンス作業を終えれば供給過多は解消すると自信を示す市場関係者もいる。ある米原油トレーダーは「メンテナンス作業が終了すれば日量300万バレルの需要が新たに生まれる」と期待を寄せる一方、それが北海ブレントを80ドル以上に押し上げるのに十分かどうかは「予断を許さない」と話した。

(Devika Krishna Kumar、Libby George、Florence Tan記者)

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

政治圧力で独立性揺らぐFRB、今週FOMCは0.2

ワールド

クックFRB理事、住宅ローン申請違反の証拠なし 市

ワールド

カナダ競争局、英アングロと加テックの合併を調査

ワールド

インド貿易赤字、8月は264億ドルに縮小
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中