ニュース速報

ビジネス

物価目標、CPIの値どこまで厳密に扱うか議論余地=12月日銀要旨

2023年01月23日(月)09時50分

 日銀が2022年12月19―20日に開いた金融政策決定会合では、2%物価目標を巡り、1人の委員が「CPI上昇率で表現した数字をどこまで厳密なものとして扱うべきか、議論の余地があるのではないか」と述べていたことが明らかになった。写真は2014年1月、都内で撮影(2023年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 23日 ロイター] - 日銀が2022年12月19―20日に開いた金融政策決定会合では、2%物価目標を巡り、1人の委員が「消費者物価指数(CPI)上昇率で表現した数字をどこまで厳密なものとして扱うべきか、議論の余地があるのではないか」と述べていたことが明らかになった。一方で、別の1人の委員は「目標値の修正は目標を曖昧にし、金融政策の対応を不十分なものにする恐れがあるため、適当でない」との見解を示した。

日銀が23日、12月の決定会合の議事要旨を公表した。岸田文雄首相は新しい日銀総裁決定後に政府・日銀の共同声明の見直しの是非を新総裁と議論する方針を示しており、日銀ボードメンバー内の物価目標を巡る「温度差」は今後、共同声明見直しの議論に影響する可能性もある。

ある委員は、現時点では金融緩和の継続が適当だが「いずれかのタイミングで検証を行い、効果と副作用のバランスを判断していくことが必要だ」と指摘した。

<長期金利の変動幅拡大、政府出席者も理解>

12月の決定会合では、長期金利の変動幅を従来のプラスマイナス0.25%程度からプラスマイナス0.5%程度に拡大することを決めた。多くの委員は、10年ゾーンで価格形成にゆがみが生じており、年限間の金利の相対関係や現物と先物の裁定といった点で「債券市場の機能度が低下している」と指摘した。「社債発行時に金利目線が定まらず、投資家の購入意欲の低下やスプレッドの上乗せを招いているという指摘も聞かれている」と1人の委員が述べた。

ある委員は、イールドカーブを全体として低位に安定させるべく「全年限で国債購入額を増額したうえで、状況に応じて機動的な買い入れを実施することが適当だ」と指摘。このことは「金融緩和の持続性強化につながる」と話した。

複数の委員は、長期金利の変動幅を拡大した場合でも、インフレ予想の上昇もあって「実質金利の低下を通じた強力な緩和効果が続く」との認識を示した。

2日目の決定会合では、政府出席者からの申し出で午前10時51分に会合が中断、11時28分に再開した。財務省や内閣府の出席者は長期金利の変動幅拡大などの議論について「物価目標を実現する観点から、より持続的な金融緩和を実施するためのものと受け止めている」と発言した。

(和田崇彦)

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米英豪、ロシアのウェブ企業制裁で協調 ランサムウエ

ビジネス

ブラックロックの主力ビットコインETF、1日で最大

ワールド

G20の30年成長率2.9%に、金融危機以降で最低

ビジネス

オランダ政府、ネクスペリア管理措置を停止 中国「正
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、完成した「信じられない」大失敗ヘアにSNS爆笑
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 6
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 7
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 8
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 9
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中