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東芝報告書、前経営陣「企業倫理反する」 法的責任は問わず

2021年11月12日(金)15時27分

11月12日、東芝は、昨年7月の定時株主総会に関する調査を行っていた外部委員がまとめた報告書を公表した。写真は写真は同社のロゴ。都内で6月撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon )

[東京 12日 ロイター] - 東芝は12日、昨年7月の定時株主総会に関する調査を行っていたガバナンス強化委員会がまとめた報告書を公表した。当時の車谷暢昭社長、豊原正恭副社長、加茂正治常務の行為について「企業倫理に反する」としながらも「法的責任を問うことはできない」と結論づけた。

報告書は、同社と経済産業省との連携、海外ファンドなど大株主への対応について、豊原氏と加茂氏が「一連の行為を実行」し、車谷氏は「一連の行為に一部関与し、両名に対する指揮命令権を有していた」と認定。「経産省の働き掛けに期待して株主対応を進めるとの方向性が執行部内で決められ」たことを明らかにした。

そうした行為の中に、大株主の株主提案権や議決権行使を制約するための違法な働きかけがあったかに関しては「否定する結論に至った」ものの、株主対応の公平性や透明性に「疑義を抱かせ、市場が求める企業倫理に反するものと評価せざるを得ない」と苦言を呈した。

また、問題が発生した直接的な原因として「外国投資ファンドに対する過度の警戒心と健全な関係構築に向けた姿勢の不足、経産省に依存しすぎる姿勢」を挙げた。

<経産省の行為「違法との判断困難」>

経産省幹部が同社筆頭株主のエフィッシモ・キャピタル・マネジメント、第2位株主の3Dインベストメント・パートナーズなどに直接働きかけた点については、「経済安全保障等の行政目的に基づくものとみるのが相当」で、外為法を逸脱して株主の行動を制約することを目的とした「違法なものであったとみることは困難」だとした。

その背景として「東芝の技術の海外流出を防止し、経営の安定を図ることは、日本の経済安保の観点から重要性を有する」点を指摘した。

<コンプラの仕組みに「魂入らず」>

報告書をまとめたガバナンス強化委員会で委員長を務めた元最高裁判所判事の金築誠志氏は会見で、「コンプライアンス徹底のための手厚い制度の構築など、形は立派なものができているが、これに魂が入っていないのではないか」と指摘。「提言を受けてもらうことが東芝再生の出発点になる」と述べた。

同社は外部有識者に委託してまとめた今年6月の調査報告書で、昨年の定時株主総会が公正に運営されたものとは言えないとの指摘を受けたことから、再び第三者に委託して真相究明や責任の所在明確化に関する調査を進めていた。

<株価急落、一時4%安>

東京株式市場では報告書の公表後、同社株に売りが集中。一時、前日比4.5%安の4715円まで下げ幅を拡大した。

(基太村真司、久保信博 編集:橋本浩、石田仁志、田中志保)

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