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債券買い入れプログラム、停止検討は時期尚早=豪中銀議事要旨

2021年06月15日(火)16時31分

オーストラリア準備銀行(中央銀行)が15日に公表した6月の理事会議事要旨によると、理事会は債券買い入れプログラムの停止検討は時期尚早との認識で一致した。写真は豪ドル紙幣、2018年2月撮影(2021年 ロイター/Daniel Munoz)

[シドニー 15日 ロイター] - オーストラリア準備銀行(中央銀行)が15日に公表した6月の理事会議事要旨によると、理事会は債券買い入れプログラムの停止検討は時期尚早との認識で一致した。

債券買い入れプログラムを継続する意向を示唆した。6月の理事会では、雇用・物価の押し上げに向け、様々な選択肢が提示された。

議事要旨によると、6月の理事会では現行の1000億豪ドル(770億米ドル)規模の債券買い入れプログラムが9月で終了した際に、大規模な量的緩和を縮小する案や廃止する案も議論された。

RBAが債券買い入れプログラムをどのように修正する可能性があるかについて明言したのは初めて。最終決定は7月6日の理事会で下される。

市場関係者によると、債券買い入れプログラムを巡ってどのような決定が下されても、政策金利は長期にわたって過去最低の0.1%で据え置かれる見通し。

議事要旨は「債券買い入れプログラムは景気回復に必要な緩和的環境を支える要因の一つであったことを踏まえ、理事会はプログラムの停止を検討することは時期尚早だと認識した」としている。

6月の理事会では、第3弾の1000億豪ドル規模の債券買い入れを半年間実施する選択肢も議論された。長期的に買い入れ額を縮小し、買い入れ対象を分散する案が出た。

プログラムをより長期間行い、指標や経済見通しに基づいて購入ペースを今よりも頻繁に見直すという方針に変えることも議論した。

RBAはどの選択肢が望ましいか、見解を示していない。市場関係者の見方も分かれており、一部の市場関係者は追加の1000億豪ドルの買い入れを予想。別の市場関係者は柔軟なプログラムを予想している。

議事要旨は「7月の決定においては、雇用とインフレに関する理事会目標の進捗状況と、異なる選択肢が金融状況全体に及ぼす可能性のある影響について主に考慮する」としている。

6月の声明文から「さらに国債を購入する用意がある」との文言が削除されたことを受け、債券買い入れプログラムが見直されるとの観測が高まった。

中銀は、7月理事会後にロウ総裁が会見を開くことも発表している。

RBAは、3年債利回りの目標(現行0.1%)を今後どうするかについても、7月の理事会で検討する方針を示した。アナリストの間では、2024年4月償還債以降は目標を設定しないとの見方が多いが、RBAは市場の見方に同意しているかどうかには言及しなかった。

市場関係者は、17日のロウ総裁の講演や23日のエリス総裁補の講演、ロウ総裁が出席する30日のパネル討論会に注目する見通し。

RBCのエコノミスト、スリン・オン氏は「RBAが7月6日の理事会を前に市場の価格形成や観測に異議を唱えたければ、今後数週間で数多くの機会がある」と述べた。

豪ドルは小幅下落し、1豪ドル=0.7711米ドル。議事要旨の内容がハト派的と受け止められた。

金融緩和の必要性として中銀はこれまで、インフレ率目標(2─3%)の達成を後押しするため、賃金上昇率が3%を大幅に上回る必要があるとの見解を繰り返し示している。

コアインフレ率は現在過去最低の1.2%。賃金の伸びは1.5%で、欧州の2%や米国の約3%を下回っている。

雇用情勢は改善しているものの、RBAは賃金圧力の低迷が少なくとも2024年まで続くと予想している。

求人件数などの雇用の先行指標は、今後数カ月でさらに雇用が拡大することを示唆しているが、RBAの調査によると、人手不足に悩む企業は賃金以外のインセンティブを提示しており、一回限りの一時金の支払いや柔軟な働き方を認めるといった形で従業員を確保している。

賃金を引き上げて新しい人材を採用するよりも、人手不足で生産を縮小することを選ぶ企業もあるという。

NABのエコノミスト、テイラー・ニュージェント氏は「(議事要旨では)物価・賃金に関する今のRBAのハト派的な見解が示された。ニュージーランド中銀やカナダ中銀とは違い、来年の利上げを示唆することを急いでいないようだ」と述べた。

ロイター
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