ニュース速報

ビジネス

米ゲームストップ一時45%急落、取引制限緩和で再び上昇

2021年01月29日(金)13時05分

米ゲーム販売ゲームストップが28日の通常取引で一時約45%急落。序盤に上昇する場面もあったが、オンライン証券のロビンフッドやインタラクティブ・ブローカーズなどが同銘柄の取引を制限したことを背景に下げに転じた。ニューヨークで27日撮影(2021年 ロイター/NICK ZIEMINSKI)

[28日 ロイター] - 米ゲーム販売ゲームストップが28日の通常取引で一時約45%急落。序盤に上昇する場面もあったが、オンライン証券のロビンフッドやインタラクティブ・ブローカーズなどが同銘柄の取引を制限したことを背景に下げに転じた。

ただその後、ロビンフッドとインタラクティブは取引制限を29日に緩和すると発表。これを受け、時間外取引では再びゲームストップや米映画館チェーン大手AMCエンターテインメント・ホールディングスなどの株価が値上がりした。

取引制限を巡っては、個人投資家を犠牲にしてウォール街を保護する措置だとの批判が、個人投資家、著名人、政策当局者から上がっていた。

これを受け、ロビンフッドは29日から制限付きで株式の購入取引を再開すると表明した。

ロビンフッドのブラッド・テネブ最高経営責任者(CEO)はCNBCとのインタビューで「当社と顧客を守るため、こうした銘柄の購入を制限する必要があった」と説明。

「マーケットメーカーやヘッジファンドなどからの指示で取引を制限したわけでは絶対にない」と述べた。

ブルームバーグが28日、関係筋の話として伝えたところによると、ロビンフッドは、銀行の信用枠から一部の資金を引き出した。JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス・グループなどから少なくとも数億ドルの資金を引き出したという。

ロビンフッドのコメントは取れていないが、同社はブログで、ボラティリティーにより、資本要件や清算機関の預託金に関する義務に影響が出ていると投稿していた。同CEOは流動性危機は全く起きていないと述べている。

取引制限を巡っては、ロビンフットの顧客2人が損害賠償を求めて同社を提訴。同社はネット上で情報が拡散している銘柄の購入取引を停止するとともに、一部の証券について証拠金を引き上げると表明していた。

一部の顧客は、ロビンフットから同意なしに株式を売却するとの通知があったとツイッターに不満を漏らしている。同社のコメントは取れていない。

ゲームストップは、SNS(交流サイト)「レディット」のチャットルーム「WallStreetBets」で個人投資家にゲームストップ株購入を促す呼び掛けが広がったことで、この2週間ほどで1700%急騰した。

ロビンフッドはゲームストップのほか、今週に入って同様に跳ね上がっている米映画館チェーン大手AMCエンターテインメント・ホールディングスやカナダのソフト会社ブラックベリー、ステレオ・ヘッドフォン製造のコスなどの取引を制限した。

インタラクティブ・ブローカーズは、証券取引所や規制当局が何らかの対応をするまで「この状況が解消するとは確信していない」との認識を示した。

オンライン証券各社の対応を受け、ソーシャルメディア上ではウォールストリート(金融大手)の利益を守るためにメインストリート(実体経済)をないがしろにしているとの批判も高まっている。

個人投資家の買いを誘発したレディットのWallStreetBetsが27日遅く一時非公開となり、ゲームストップ、AMC、コス、ブラックベリーは軒並み時間外取引で下落。同チャットルームの影響力の強さが浮き彫りとなった。

しかし、こうしたソーシャルメディア主導の上昇は継続している模様で、米航空大手アメリカン航空は28日の取引で一時20%超上昇した。

キングスビュー・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ポール・ノルテ氏は「ゲームストップ第2弾だ。空売り筋や空売りの好機を探っていた投資家の一角が株価を動かしている」との見方を示した。

また、カナダの銀生産会社ファースト・マジェスティックも30%超上昇。メキシコでの税金を巡る不正行為の刑事責任が免除されたとの報道を受けた。iシェアーズ・シルバー・トラスト上場投資信託(ETF)も上昇した。

WallStreetBetsには「ゲームストップを手掛けた後は、マクロ面のファンダメンタルズをけん引役にファースト・マジェスティックとiシェアーズ・シルバー・トラストETFに買い戻しが入るだろう」と投稿された。

規制当局の資料によると、ファースト・マジェスティックの1月前半の空売り比率は24.9%と12月後半の21.1%から上昇した。

フォルトゥナ・シルバー・マインズとフレスニーヨが10%高となったほか、パン・アメリカン・シルバー、エンデバー・シルバー、シルバーコープも上昇した。

ゲームストップなどの株価急騰を受け、規制強化を求める声が上がる中、証券取引委員会(SEC)のクレイトン委員長はCNBCに対し「空売りの監視では、米市場は最も透明性が高いと言えるだろう。しかし、常に改善の余地はある」と語った。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テマセク、運用資産が過去最高 米国リスクは峠越えた

ワールド

マレーシア、対米関税交渉で「レッドライン」は越えず

ビジネス

工作機械受注、6月は0.5%減、9カ月ぶりマイナス

ビジネス

米製薬メルク、英ベローナ買収で合意間近 100億ド
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 5
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 6
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 9
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 10
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 7
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中