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アングル:欧州IT企業が上場計画を加速、好調米市場に熱視線

2020年12月21日(月)12時07分

12月16日、 欧州のIT(情報技術)企業の一部が、来年の早い時期に予定する上場計画の加速化を図っている。フランクフルトで2019年3月撮影(2020年 ロイター/Ralph Orlowski)

[ロンドン 16日 ロイター] - 欧州のIT(情報技術)企業の一部が、来年の早い時期に予定する上場計画の加速化を図っている。好調な米国の新規株式公開(IPO)市場を支えている大量の投資資金の一部を取り込むのが狙いだ。

IT企業の評価額は既に新型コロナウイルス大流行前からうなぎ登りで、目をむくような水準に達している。オンライン販売や料理宅配などの事業は新型コロナ禍を生き残ると見て、投資家がこうした企業に資金を投資しているためだ。

リフィニティブのデータによると、米国は上場先の大半を占め、IPOによる調達が年初来で過去最高の810億ドルに達している。

先週ニューヨーク市場に上場した料理宅配大手ドアダッシュや民泊仲介大手エアビーアンドビーは、いずれも取引初日に株価が70-115%急騰した。

一方、欧州は今年のIPOによる調達が190億ドルと、少なくとも10年ぶりの低水準にとどまっている。プライベートエクイティ(PE)による調達など、IPOに代わる、より魅力的な調達手段が存在していることなどが理由だ。

しかしある株式資本市場(ECM)バンカーによると、彼のチームは欧州全体から上場に向けたマンデートが50件近くも集まっており、そのうち60%以上をITかIT関連企業が占めている。

法律事務所クーリーのパートナー、クレア・キーストバトラー氏は「このセクターには上場作業が終盤を迎えている未公開企業が多数あり、短期や中期のIPOを現実的に視野に入れている」と述べた。

複数の銀行関係者によると、英国ではオンライン料理宅配のデリバルー、サイバーセキュリティーのダークトレース、電子商取引のミュージックマグパイ、オンライン小売りのムーンピッグ、消費者レビューのトラストパイロットなどが来年の上場を目指している。

ドイツでは中古車取引デジタルプラットフォーム運営のアウト1、電子商取引のアバウトユーがフランクフルト市場での上場を計画している。フランスでは過去に上場を検討した複数の「ユニコーン企業」が計画を加速する可能性がある。

関係者がロイターに語ったところによると、小荷物用ロッカーサービスを手掛けるポーランドのインポストは来年初めにアムステルダム市場でIPOを行う予定だ。

<国内か、海外か>

しかし、こうした欧州IT企業の上場先がすべて欧州の証券取引所になるという保証はない。欧州市場を選択する企業もあるだろうが、ITに詳しい投資家層が厚く、上場規則が緩い米国での公開を検討している企業もある。

今年の上場が100件余りに上った特別買収目的会社(SPAC)を利用する手法を選ぶ企業もあるだろう。

RBCキャピタル・マーケッツのECM欧州のグローバル共同ヘッド、ダレル・ウデン氏は「欧州のIPOの量に最も影響を与えそうな要因は、SPACやPEなどIPOに代わる調達手段だ」と述べた。

ベンチャーキャピタル企業ノースゾーンのパートナー、マイケル・コッティング氏は、欧州の証券取引所の一部が今後も域内で魅力のある企業を引きつけると予想。ノルウェーの教材会社カフートはオスロ市場に上場したが、「もちろん、このセクターの企業のほとんどはSPACも選択肢に入れている」とも述べた。

欧州の証券取引所の中には、株式の種類構成や浮動株比率を見直すなど上場規則を緩和する動きも見られる。英国は発行済み株式の少なくとも25%を浮動株とするよう定めた上場規則の見直しを進めている。

IT企業は創業者が経営を率い、資本が中規模で起業から日が浅く、強い議決権の維持を望む場合が多い。ウデン氏は、IPOで株式の種類を分けたり、浮動株比率の基準を緩和したりすれば、創業者や初期投資家が上場で利益を得る可能性を手放さずに済むようにしながら、幅広い調達手段を利用できるため、成長の加速を支援できると説明した。

(記者:Clara Denina、Abhinav Ramnarayan)

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