ニュース速報

ビジネス

アングル:ドル、安全資産として円や金をしのぐ 9月株波乱で

2020年10月01日(木)12時46分

9月30日、海外経済の回復懸念や米政局の不透明感から株式市場が不安定化した9月、ドル相場は反発し、金や円をしのぐ安全資産としての地位を示した。写真はドル紙幣。5月撮影(220年 ロイター/Dado Ruvic)

[ニューヨーク 30日 ロイター] - 海外経済の回復懸念や米政局の不透明感から株式市場が不安定化した9月、ドル相場は反発し、金や円をしのぐ安全資産としての地位を示した。

ドル指数は9月1日から29日までに約2%上昇し、月間上昇率は過去1年2カ月で最高に達する勢いとなった。

これに対し、金は同期間に約4%下落、S&P公益株指数<.SPLRCU>と円はほぼ横ばいだった。10年物米国債利回りは月初の0.67%から0.64%前後に低下し、S&P500種総合株価指数<.SPX>は約5%下落した。

ドル反発の背景にはいくつかの要因がある。ドルは3月の高値から8%下落。このため8月に過去最高値を更新した金などに比べ割安感が出ていた。また円の安全資産としての地位は、コロナ禍を受けた世界的な金利低下で優位性が損なわれた可能性がある。

ニューバーガー・バーマンのサノス・バーダス氏は「ドルの反発は、世界的なリスク許容度低下に対する資本市場の反応と関係がある」と言う。

ここ数カ月、ドルの魅力低下につながっていた多くの要因が消えている様子もある。欧州では新型コロナウイルスの感染拡大が加速し、ユーロを押し上げていた景気回復期待が脅かされている。英国では「秩序無き」欧州連合(EU)離脱への懸念がポンドを圧迫している。

加えて、英国とオーストラリアでマイナス金利政策導入の思惑が広がったことも、一部の投資家にとって両国通貨の魅力を失わせた。もっとも、マイナス金利導入の可能性はまだ小さそうだ。

米国では大統領選を巡る不透明感と、年内に議会が景気対策で合意する可能性の低下が、安全資産への需要をあおった。

BCAリサーチのチェスター・ノトニフォー氏は、株式市場の変動率が上がった時や、外為市場が長い安定期を経て荒れた時、ドルは上昇する傾向があると指摘。

ドイツ銀行が算出する外為市場全体のボラティリティー(変動率)<.DBCVIX>は29日時点で8.4と、7月末の5.93から跳ね上がっている。

一方、市場が落ち着きを取り戻せばドルは再び下落するとみて、ドルを売って利益を確定したり、ドル売りポジションを組む市場参加者もいる。

BNPアセット・マネジメントのモムチル・ポジャリエフ氏は「私はこれまでドル強気派だった。しかし今は、だれもが買っているこの機をとらえてドルを売っている」と話した。

アムンディ・パイオニア・アセット・マネジメントのパレシュ・ウパドヤヤ氏は、空売り筋の踏み上げがドル高の追い風になっていると指摘。しかし「これはドル安基調を長引かせるのに必要な健全な調整だ」と考え、ドル安を見込んでユーロとチェココルナの買いを増やしたという。

(Gertrude Chavez-Dreyfuss記者)

(※原文記事など関連情報は画面右側にある「関連コンテンツ」メニューからご覧ください)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米消費者信用リスク、Z世代中心に悪化 学生ローンが

ビジネス

米財務長官「ブラード氏と良い話し合い」、次期FRB

ワールド

米・カタール、防衛協力強化協定とりまとめ近い ルビ

ビジネス

TikTok巡り19日の首脳会談で最終合意=米財務
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中