ニュース速報

ビジネス

米FRB、一般企業と地方政府に資金供給 2.3兆ドルの緊急措置

2020年04月10日(金)01時46分

米連邦準備理事会(FRB)は9日、新型コロナウイルス感染拡大への対応策の一環として、地方政府と中小企業に対する総額2兆3000億ドルの支援策を打ち出した。ワシントンのFRB本部で2018年8月撮影(2020年 ロイター/Chris Wattie)

[ワシントン 9日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は9日、新型コロナウイルス感染拡大への対応策の一環として、地方政府のほか、中小企業を含む一般企業に対する総額2兆3000億ドルの支援策を打ち出した。

具体的には、従業員数が1万人以下の企業に対する期間4年間の融資を民間銀行を通して実施するほか、新型ウイルスの感染拡大への対応に追われている州政府のほか、人口の多い都市や郡が発行する債券を直接買い取る。

今回の対応策は、新型ウイルスの感染拡大を受けFRBが打ち出した措置の中で最も画期的なものとなる可能性がある。パウエルFRB議長は声明で、FRBが果たすべき役割は従来の市場の流動性と機能を維持することから、米国が深刻な公衆衛生問題に対応するにあたり経済、財政的な余地を提供することに拡大したと説明。

「米国は、感染患者を治療し、感染拡大を食い止めて、この公衆衛生を巡る危機に対応することを最優先する必要がある」とし、「FRBの役割は経済活動が抑制されている間、できるだけ多くの救済と安定を提供することで、FRBが現時点で取る措置は回復を可能な限り力強いものにすることの一助となる」とした。

対応策の多くは9月までの時限措置となるが、パウエル議長は米シンクタンクのブルッキングス研究所が主催したオンラインイベントで、 新型ウイルスの封じ込めと経済の堅調な回復に必要な限り、FRBはコミットし続けるとの立場を表明。「FRBはこうした融資権限を未曾有の規模で実施する」とし、「米国が確実に回復軌道に乗ったと確信できるまで、FRBはこうした権限を力強く、かつ積極的、野心的に利用していく」と述べた。

企業支援では、従業員数が1万人以下、もしくは売上高が25億ドル以下の企業に対し、民間銀行を通して合計で最大6000億ドルの融資を実施。規模がより大きな企業に対し財務省が直接融資を行えるようにするほか、従業員数が500人以下の企業に対する総額3500億ドルの支援も実施する。

新たな融資の返済は1年間繰り延べられ、民間銀行は実施した融資の少なくとも5%は保有することが義務付けられる。こうした融資を受けた企業は「従業員の雇用維持に向けた妥当な取り組み」を行う必要があり、受けた融資を現存する債務の借り換えなどに振り向けることはできない。また、配当金の支払いなどに関する制限を順守する必要がある。

地方政府支援には最大5000億ドルを振り向け、償還期限が最長で2年の地方債をFRBが直接買い取る。対象となるのは、各州政府とコロンビア特別区(首都ワシントンDC)のほか、人口200万人以上の郡と、人口100万人以上の市。下院民主党はこうした地方政府支援の必要性を呼び掛けていた。

FRBは声明で、地方政府の動向を注視し、一段の支援が必要か検証するとした。

中小企業専門のコンサルタントRSMのエコミスト、ジョー・ブルスエラス氏は「米経済の中心に位置する中小企業にマネーを供給する措置を打ち出したことで、FRBは歴史的な一歩を踏み出した」とし、「中小企業の支払い能力を巡る危機を未然に防ぐための確固とした初めの一歩となった」と評価。多くの融資需要が見込まれるとし、規模は1兆ドルまで拡大される可能性があるとの見方を示した。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

11月米自動車販売、フォード・現代自は小幅減 EV

ワールド

国際貿易と金融システムの調和が重要、対応怠れば途上

ワールド

ウクライナ和平案巡る米特使との協議、「妥協に至らず

ビジネス

エヌビディア、オープンAIへの1000億ドル投資は
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 4
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 5
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 6
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 10
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中