ニュース速報

ビジネス

米失業保険申請が2週連続で600万件超え、厳格な新型コロナ対策で

2020年04月10日(金)02時22分

米労働省が9日発表した4月4日終了週の新規失業保険申請件数は660万6000件と、前週からやや鈍化したものの、2週連続で600万件を上回った。写真はアーカンソー州フェイエットビルで失業保険申請を待つ人たち。6日撮影(2019年 ロイター/NICK OXFORD)

[ワシントン 9日 ロイター] - 米労働省が9日発表した4月4日終了週の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は660万6000件と、前週の686万7000件(上方改定)からやや鈍化したものの、2週連続で600万件を上回り、3月21日終了週からの3週間の合計は1678万件となった。厳格な新型コロナウイルス対策が背景。

ロイターがまとめたエコノミスト予想の中央値は525万件。最高は929万5000件だった。

この内容を受け、4月に最大2000万人の米雇用が失われるとの見方が強まる見通し。S&Pグローバルの首席米国エコノミスト、ベスアン・ボビノ氏は「これら数字は4月の米雇用統計が再び記録的に悪い内容となる可能性を示唆している」と指摘。「米国はリセッション(景気後退)入りしており、悪化するもようだ。回復にどの程度の時間がかかるかが注目点だろう」と述べた。

3月28日終了週の失業保険受給総数は前週から439万6000件増加し、745万5000件と過去最高。これまでの最高は2009年5月に付けた663万5000件だった。

先週発表された3月米雇用統計では非農業部門雇用者数が前月から70万1000人減と、市場予想の10万人減を大幅に超える落ち込みになったほか、失業率は4.4%と前月の3.5%から悪化した。0.9%ポイントの上昇は、1カ月の上昇としては1975年1月以来最大となる。

スカリア労働長官は声明で「新型ウイルスの感染拡大抑制に向け米国の労働者、およびその家族が支払っている犠牲が今回の統計に反映された」と述べた。

オックスフォード・エコノミクスの首席米エコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は「労働市場は厳しい局面に突入した」とし、「4月に失業率が14%に急上昇する」と予想した。

オンライン就業支援企業、グラスドアのシニアエコノミスト、ダニエル・ザオ氏は「新型ウイルス危機による影響は初めの1カ月だけでも世界的な金融危機を受けたグレート・リセッションを超える見通しだ」とし、「新型ウイルス感染拡大による危機の影響がどの程度の期間にわたり継続するのかを推し量る上で、新規失業保険申請件数のいわゆる新たな常態(ニューノーマル)が1つの先行指数となる」と述べた。

現時点で米国民95%超が新型コロナ感染防止に向けた外出制限や自宅待機措置下にあるため、4月4日終了週の申請件数の前週からの鈍化は一時的なものとみられる。

政府は新型ウイルス感染拡大に対応するための経済対策で失業保険も拡充。1月の失業保険支給の月額は1人平均385ドルだったが、従来のこうした支給に加え、最長4カ月間、週ごとに600ドル上乗せした。政府が設定する最低賃金は1時間当たり約7.25ドル。これに対し上乗せ分は週当たりの労働時間が40時間だったとすると、時間当たり15ドルに相当する。

キャピタル・エコノミクスのシニア米国エコノミスト、アンドリュー・ハンター氏は「新規失業保険申請件数のこのところの急増の背景には失業保険の拡充があるかもしれない」とし、「レイオフを発表する際に失業保険拡充に言及する大手小売業者もあり、労働者は一時帰休を受け入れることにこれまでより前向きになっている可能性がある」との見方を示した。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB追加利下げは慎重に、金利「中立水準」に近づく

ビジネス

モルガンS、米株に強気予想 26年末のS&P500

ワールド

ウクライナ、仏戦闘機「ラファール」100機取得へ 

ビジネス

アマゾン、3年ぶり米ドル建て社債発行 120億ドル
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 8
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中