ニュース速報

ビジネス

アサヒの豪カールトン買収計画、現地競争当局が懸念

2019年12月12日(木)14時17分

 12月12日、アサヒグループホールディングスが計画する豪ビール会社カールトン・アンド・ユナイテッド・ブリュワリーズの買収を巡り、オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)は、サイダー(果実を発酵させた醸造酒)市場の競争低下につながるほか、ビール市場でも同様の状況が懸念されると指摘した。写真はアサヒのロゴ。2016年5月、都内で撮影(2019年 ロイター/Toru Hanai)

[12日 ロイター] - アサヒグループホールディングス<2502.T>が計画する豪ビール会社カールトン・アンド・ユナイテッド・ブリュワリーズの買収を巡り、オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)は12日、サイダー(果実を発酵させた醸造酒)市場の競争低下につながるほか、ビール市場でも同様の状況が懸念されると指摘した。

ACCCのロッド・シムズ委員長は、発表文書で「買収案では、サイダーの2大サプライヤーが極めて集中した市場で統合することになる」とし、「アサヒはサイダーとビールが同じ市場に含まれると主張しているが、われわれの予備的見解ではサイダーは別の市場だ」と語った。

ビール世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)は7月、豪子会社のカールトンをアサヒに売却することで合意したと発表した。[nL4N24K1J2]

2016年に英同業SABミラーを買収して以降、巨額の債務を抱えるABインベブは、カールトンの売却を来年第1・四半期に完了し、売却益を債務圧縮に充てる方針だが、雲行きが怪しくなってきた。

ACCCは、アサヒとカールトンが統合すればサイダーの売り上げの約3分の2を占めるとしたほか、アサヒは2大ビール会社のカールトンとライオンの競争を制約する可能性があり、「将来的にはさらに大きな脅威となる可能性がある」としている。

モーニングスターのシニア株式アナリスト、ジーニー・チェン氏は「こうした懸念があるため、この取引が承認される可能性は低い。アサヒとABインベブは再交渉する必要がある」と指摘。アサヒのサイダー事業売却が必要になる可能性や、ABインベブが別の買い手を見つける必要性に言及した。

カールトンは特に追加するコメントはないとした。アサヒの広報担当者は、現時点で何らかの変更は計画していないとし、引き続き当局に情報を提供していく方針を示した。

アサヒはオーストラリアで高級ビールを展開する海外企業としては2位。国内外のさまざまなビールや、サイダー、スピリッツ(蒸留酒)を製造・販売している。

カールトンを買収すれば、ベルギーのABインベブ、オランダのハイネケンに次いで世界3位のビール大手となる。

カールトンの主力ビールブランド、ビクトリアビター(VB)を手中に収めることで、子会社のライオンを通じてXXXX(フォーエックス)ゴールドブランドを手掛けるキリンホールディングス<2503.T>との競争もより激しくなる。

ACCCは来年1月22日まで、関係当事者の提案を募っており、3月19日に最終決定について発表する計画だ。

*アサヒのコメントを追加しました

(※原文記事など関連情報は画面右側にある「関連コンテンツ」メニューからご覧ください)

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロ、ウクライナで戦略的主導権 西側は認識すべき=ラ

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタル基盤投資会社を買収 AI

ワールド

トランプ氏、パウエルFRB議長提訴を警告 後任は来

ワールド

トランプ氏、イラン攻撃を警告・ハマスに武装解除要求
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 7
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中