ニュース速報

ビジネス

米FRBが0.25%利下げ 「適切に行動」削除、緩和休止示唆

2019年10月31日(木)07時45分

米連邦準備理事会は29─30日に開いた連邦公開市場委員会で、フェデラルファンド金利の誘導目標を1.50─1.75%に25ベーシスポイント引き下げることを8対2で決定した。写真はワシントンのFRB本部。昨年8月撮影(2019年 ロイター/Chris Wattie)

[ワシントン 30日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は29─30日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を1.50─1.75%に25ベーシスポイント(bp)引き下げることを8対2で決定した。

利下げは予想通りで、前回9月に続き今年3回目。貿易戦争により米経済がリセッション(景気後退)に陥るのを防ぐ。ただFRBは、利下げを今後休止する可能性があることを示唆した。

FRBは今回のFOMC声明から、景気拡大を維持するために「適切に行動する」との文言を削除。この文言は将来的な利下げを示すものと解釈されていた。今回の声明では代わりに、「適切な道筋を見極めるに当たり、経済の見通しについて今後もたらされる情報の意味合いを引き続き注意深く監視する」とし、よりあいまいな表現にとどめた。

米経済の現状については、労働市場は「力強く推移し」、経済活動は「緩やかなペースで拡大している」とし、前回の声明をほぼ踏襲。利下げの理由については「経済見通しに対する世界動向の影響や弱いインフレ圧力を考慮した」とし、同様に前回の声明を踏襲した。

企業投資と輸出については、弱い状態が続いたとの見方を示した。

パウエルFRB議長は記者会見で「金融政策は良い状況にある」と指摘。「世界情勢を踏まえ、米経済の強さを維持するため、現在みられているリスクに対する保険として今回の措置を取った」と説明した。

「経済に関する今後の情報がわれわれの見通しと広範囲にわたって一致し続ける限り、金融政策の現在のスタンスは依然適切である可能性が高い」と述べた。

パウエル議長の発言は、米景気支援に向けさらなる利下げを要求するトランプ米大統領の要求と対立する。30日発表された第3・四半期の米実質国内総生産(GDP)は季節調整済み年率換算で前期比1.9%増と前期から伸びが鈍化、トランプ氏が過去に実施した大規模減税などで達成できるとしていた成長率3%を大幅に下回っている。

ただ、議長が今回示した新たなスタンスは、過去最長となっている米景気拡大局面の耐久性を裏付けるものとみられる。

パウエル議長は会見で、米経済は好調であり現在の政策スタンスの下でこの状況が続くとみる理由について、堅調な個人支出、改善しつつある住宅販売のほか、健全な水準とみられる資産価格など多くの要因を挙げた。

また、米中貿易戦争は解決に「一歩近づいている」とし、英国が合意のないまま欧州連合(EU)から離脱する可能性も低下しているようだと指摘。米経済は今後も「緩やか」に拡大していく見通しで、労働市場の強さと、FRBの目標である2%に向けたインフレ率の上昇を見込んでいるとし、追加利下げにはこの見通しの「大幅な再評価」が必要になるとの見解を示した。

今回の決定ではカンザスシティー地区連銀のジョージ総裁とボストン地区連銀のローゼングレン総裁が反対。両総裁は今年これまでの利下げにも反対票を投じている。

一方、前回のFOMCで50ベーシスポイントの利下げを主張して反対票を投じた米セントルイス地区連銀のブラード総裁は今回のFOMCで賛成に回り、FRB内部での利下げ圧力の低下が示唆された。

デレゲート・アドバイザーズの投資調査部門責任、ジム・パワーズ氏は今回のFOMCについて、「適切に行動するとの文言を削除したのは重要だ。市場では利下げ休止を意味していると受け止められている。これは想定されていたことで、全般的にプラス要因となる」と述べた。

今回の利下げは市場の予想通りだったが、今後についてはここ数週間で利下げ観測が大幅に後退した。FF金利先物市場では現在、来年に1回の利下げが織り込まれている。

30日の米債券市場では長期債利回りの反応は薄かったものの、FRBの政策期待を反映しやすい短期債利回りは一時上昇。2年債利回りは約1.67%と10月1日以来の高水準を付けた。ただ、その後はパウエル議長の会見を受け、下げに転じた。

米国株式市場は上昇し、S&P総合500種<.SPX>は終値で最高値を更新した。

*内容を追加して再送します。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米下院補選で共和との差縮小、中間選挙へ勢いづく民主

ビジネス

中立金利は推計に幅、政策金利の到達点に「若干の不確

ビジネス

米ロッキード、アラバマ州に極超音速兵器施設を新設

ワールド

中国経済は苦戦、「領土拡大」より国民生活に注力すべ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    トランプ王国テネシーに異変!? 下院補選で共和党が…
  • 10
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中