ニュース速報

ビジネス

マイナス金利撤回で議論「望ましい」「とり得ない選択肢」=日銀会合

2016年03月24日(木)10時49分

 3月24日、日銀が公表した14─15日の金融政策決定会合の「主な意見」によると、会合では複数の委員がマイナス金利の撤回に言及した。政策の重点を「物価の安定」から「金融システムの安定」に移すべきとの意見も出た。写真は都内で昨年10月撮影(2016年 ロイター/Thomas Peter)

[東京 24日 ロイター] - 日銀が24日に公表した3月14─15日の金融政策決定会合の「主な意見」によると、会合では複数の委員がマイナス金利の撤回に言及した。政策の重点を「物価の安定」から「金融システムの安定」に移すべきとの意見も出た。

3月の会合では、1月に導入を決定したマイナス金利付きQQE(量的・質的金融緩和)の評価について、さまざまな見解が示された。

同会合で佐藤健裕、木内登英の両審議委員は、当座預金の付利水準をプラス0.1%とする事実上のマイナス金利政策の撤回を主張した。

これについて複数の委員が発言。1人の委員は「マイナス金利は撤回が望ましい」としながらも、導入直後の撤回は「市場を混乱させるほか、日本銀行の信認を失墜させるリスクがある」と指摘した。別の委員は、市場もマイナス金利を前提に動き出し、多くの経済主体でも対応がとられているため「元へ戻すという選択肢はとり得ない」とし、慎重な対応が必要との考えを示した。

マイナス金利の効果については、複数の委員が貸出の基準金利や住宅ローン金利の低下など金利面での効果が表れているとし、「制度の設計段階で考えていたとおりの効果が表れた」と評価。金融市場が落ち着きを取り戻すにつれ、「所期の効果を発揮するとみている」との声もあった。

他方、日銀が効果として主張している実質金利の低下について、10年最長期国債利回り(長期金利)もマイナスに沈む中で、「名目金利については、国債の金利ではなく実体経済に影響する民間の金利を使うことが適当」との意見が出たほか、2%の物価安定目標自体を「柔軟に解釈すべき」との主張もあった。

マイナス金利による金融機関の収益減が金融仲介機能に及ぼすリスクについても議論が交わされた。

大胆な金融緩和によって早期のデフレ脱却、持続的な景気回復を図ることで「金融機関の収益にプラスに作用する」、「銀行収益は大きく改善する」点を複数の委員が強調した。

一方、マイナス金利政策によって「将来の金融不均衡蓄積のリスクを高める。人々の不安を高め、デフレマインドをかえって強める方向に作用している」との懸念も示された。

さらに、政策の重点を「物価の安定」から「金融システムの安定」に移すという「政策のリバランスが必要な局面にある」との見解も示された。

(伊藤純夫 編集:山川薫)

ロイター
Copyright (C) 2016 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、ポーランド軍に対ドローン訓練実施へ

ワールド

コンゴ、エボラ出血熱死者31人に 3年ぶり流行で

ワールド

小泉農相、20日に総裁選出馬会見 午前10時半から

ワールド

南ア中銀、政策金利据え置き 過去の利下げの影響見極
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中