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米FRB議長、金利緩やかに上昇との考え変えず 海外情勢注視

2016年02月12日(金)08時59分

2月11日、米連邦準備理事会(FRB)議長は上院銀行委員会で行った証言で、米雇用創出の持続や賃金上昇、家計支出の景気下支え効果が見通せるとの考えを強調した。写真は同日、上院銀行委で証言するイエレン議長(2016年 ロイター/Carlos Barria)

[ワシントン 11日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は11日、上院銀行委員会で証言を行った証言で、FRBの金利の道筋はあらかじめ決められていないとあらためて強調しながらも、労働市場が力強さを増すなど米経済に明るさが増していることから、米金利は年内に緩やかに上昇していくとの考えを変えていないとの見解を示した。

投資家が安全資産に殺到するなか、世界経済の鈍化と株価下落により、金融の状況がFRBの想定以上に引き締まっている、と認めた。

イエレン議長は前日に行った下院金融委員会での証言に続き、この日の証言でも、海外情勢による米経済への影響の度合いについて早まった結論を出すことに警戒感を表明。

「われわれは動向を注視している」とし、「どの年も常にリセッション(景気後退)入りの可能性はいくらか存在するが、景気拡大が長期化すると失速すると考える根拠はない」と述べた。

ただ、この日は米10年債利回りが約3年ぶりの水準に低下したほか、アジア、欧州、米国で株価が下落するなど、下院金融委員会で証言を行った前日とは状況が異なるなかでの証言となった。

こうしたなかイエレン議長は、金融市場で見られる懸念や、原油価格の下落が米インフレ率の重しになっているとの懸念に同意を示し、「これらの要因は、リスクバランスや経済の道筋、適切な政策スタンスにも影響を及ぼすだろう」と指摘。「ただ、現時点で判断するのは時期尚早だ」と語った。

FRBは昨年12月に約10年ぶりとなる利上げに踏み切った。同時に発表した経済見通しでは、2016年に4回利上げする姿勢を示唆した。ただ投資家は今や、FRBの見通しに疑問を投げかけている。

CMEフェドウォッチによると、年内利上げ確率は8.0%。この日のフェデラルファンド(FF)金利先物市場は一時、年内の利下げ可能性を織り込む場面すらあった。ただイエレン議長は、利下げは排除できないが「可能性の高いシナリオではない」とあらためて強調した。

ウェドブッシュ・エクイティ・マネジメントのマソッカ最高投資責任者(CIO)は「議長はわなにはまったようなものだ」とし「私は年内の利上げはないと見ている。利上げは一度で終わりだ」と述べた。

<マイナス金利を検証>

イエレン議長は米金利は緩やかに上昇していくとの考えをあらためて示したものの、日銀などが導入したマイナス金利について、FRBでも検証を行っていることを明らかにした。

ただ、FRBはまだ評価を終えていないとし「可能性は排除しないが、機能するかどうか判断するにはやるべきことがある」とした。

議長は力強い雇用創出、賃金上昇、底堅い消費支出が米経済の浮揚要因となるとの基調路線は維持。ただ、国内外の金融市場の状況次第でFRBの経済見通しが覆される可能性もあると指摘。追加利上げの可能性はFRBが海外情勢にどの程度反応するかにかかっているとの認識を示した。

*内容を追加しました。

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