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インタビュー:キヤノン会長、新たな買収「懸命に考えている」
3月3日、キヤノンの御手洗冨士夫会長兼社長は、インタビューで、約3337億円を投じる監視カメラ最大手の買収に続き、豊富な手元資金をもとに新たなM&Aに意欲を示した。写真は2014年1月撮影(2015年 ロイター/Yuya Shino)
[東京 3日 ロイター] - キヤノン<7751.T>の御手洗冨士夫会長兼社長は3日、ロイターのインタビューで、約3337億円を投じる監視カメラ最大手の買収に続き、豊富な手元資金をもとに新たなM&A(合併・買収)に意欲を示した。BtoB(法人向け)事業の強化をねらって、案件を探しているという。
キヤノンは、監視カメラ世界最大手のアクシスコミュニケーションズ
調査会社テクノ・システム・リサーチによると、監視カメラ市場で2014年のアクシスのシェアは20%で世界首位。監視カメラは市場全体で年率20%以上の伸びが見込め、キヤノンはアクシスをグループの成長をけん引する柱の事業に育成する方針だ。
2014年12月末の手元資金は8600億円で、アクシス買収で5000億円程度に減る見通し。ただ、御手洗会長は「キャッシュフローで2年もあれば元の水準に戻る」と述べ、追加の買収資金も不足しないとの認識を示した。
主なやり取りは以下の通り。
――アクシス買収の狙いについて。
「キヤノンはカメラ業界で世界一。この技術で成長市場に入るなら監視カメラがあると2―3年前に気付いた。ただ、キヤノンにはカメラ技術はあるがあとは何もない。そこで昨年6月に映像管理会社のマイルストーンを買収したのに続き、ネットワークシステムと販売網を持つアクシスを買収することにした。これで、監視カメラの成長に必要な技術は手に入れた」
――アクシスとどのように統合するか。
「アクシスの経営は独立する。ブランドは残すし、役員も従業員もそのまま継続する。キヤノンは資本は握るが、互いに独立したパートナーとして運営する。監視カメラの本社はアクシス。キヤノンには光学レンズや画像センサーの技術がある。アクシスはそれを使って商品ラインを拡充して、アクシスの販売網に売る。アクシスはアクシス流で成長してもらう」
――アクシスのTOB価格は高すぎるとの指摘もある。
「優良企業だからだ。リストラ費用も必要ない。優良企業は高いかもしれないが、私は優良企業しか買わない。だが、勝算があって十分に投資効果が見込める価格だ」
――監視カメラ事業は売り上げ1000億円の目標を立てていた。
「すでにマイルストーンの売り上げで200―300億円あるし、アクシスで770億円あるので、買収した瞬間に自動で達成する。そこからどう伸ばしていくかは買収後にアクシスと共同で成長戦略を練る。買収完了から2―3カ月で作る」
――追加のM&Aについては。
「懸命に考えている。だが優良企業がほしいので、買い漁ることはない。じっくり調べて、買うときは私が自ら経営者を訪問して話をする。M&Aをやる場合は、(CEOのような)なんでも決定できる人同士が話さなければ何も決まらない。アクシスも直接CEOと語り合って決めた。私が見極めたいのは、経営者を尊敬できるのか、ウィンウィンの関係を築けるのか、一緒に拡大する夢で一致できるかだ」
――M&Aで狙う分野は。
「BtoBの分野で探している。あらゆる事業分野で、アクシスのような優れた経営者がいれば会いに行くつもりだ。買収が実現するかどうかは別にどんどん会いに行きたい」
――今後も買収は手元資金を使うか。
「昨年12月末の手元資金は8600億円。アクシス買収で5000億円くらいに減っても、キヤノンのキャッシュフローを考えると2年くらいで取り戻せる。年末には6000億円くらいに戻るだろう。資金には困っていないし、買えるだけの資金は十分にある」
――金庫株も1.2億株で、総額1兆円に迫る。
「消却はしない方針。十分に厚い資本で、どんな危機にも耐えうる盤石な財務基盤を築く」
――2016年から次の5カ年計画に入る。
「まだ具体的な計画は策定していないが、次の5年で日米欧の3極体制を完成させたい。それぞれの地域に本社機能を持たせる。過去最高の業績(2007年度の売上高4兆4813億円、当期純利益4883億円)はできるだけ早期に超える。次の5年で売上高は5兆円を目指してみたい」
(村井令二 安藤律子)