ニュース速報

アングル:米大統領選、民主党の急進左派に「共倒れ」懸念

2019年08月18日(日)07時36分

[デモインズ(米アイオワ州) 13日 ロイター] - 2020年秋の米大統領選に向け、野党・民主党は来年2月に最初の党員集会をアイオワ州で開く。指名獲得を目指すエリザベス・ウォーレンとバーニー・サンダースの両上院議員が先週、同州を訪問すると、集まった人々に歓声で迎えられた。

この急進左派候補2人は親密で、すべての米国民への一律の医療保険適用や金融業界批判を提示している。また、最低賃金引き上げなど多くの共通する政策を掲げている。陣営はともに結束が固く、資金も豊富だ。

そして一部の有権者には、ある疑問も浮かんでいる。人気がある急進左派の2人がこのままアイオワ州、あるいは全米で共存しながら選挙戦を続けて行けるのか、別の言い方をするなら、2人が左派票を奪い合い、結局はバイデン前副大統領のような中道派を利する恐れはないのか、という疑問だ。

バージニア州から来たウォーレン氏の支持者、シャーマ・マザーさん(50)は「当然私もそれを心配している」と語った。

アイオワ州の党員集会までまだ半年近くあり、指名争いの行方は見えないものの、世論調査では常にバイデン氏が首位に立ち、サンダース氏もしくはウォーレン氏が2番手につける。

2人の支持を合わせればバイデン氏を上回る計算で、急進左派が主張するように、民主党が左傾化しつつあることを浮き彫りにしている。ウォーレン氏を支持する団体「進歩主義的な変化を目指す運動委員会(PCCC)」の共同創設者、アダム・グリーン氏は「2人がコンビを組んで指名争いの舞台を引っ張っている」と指摘する。

2人は互いにライバルではなく友人だと主張し、今のところ相手を攻撃して政治的な得点を稼がないという約束を守っている。

それでもアイオワ州では、ウォーレン氏がサンダース氏の長年にわたる支持層の一部を取り込もうとしていることを示す兆候がある。モンマス大学の最近の調査によると、同州の民主党員のウォーレン氏支持率は21%と、バイデン氏の28%に次ぐ高さで、サンダース氏は9%に低下した。

サンダース氏陣営は12日、この調査について、同氏の支持層のサンプルが過小になっている欠陥があるとの見方を示した。

サンダース氏の姿を見ようと、アイオワ州に来たアレクシス・ジョンソンさん(33)は、トランプ大統領を倒すことが最優先だと語りつつ、ウォーレン氏にはほとんど興味を示さず「バイデン氏かサンダース氏かの選択になる。そして私が投票するのはサンダース氏だ」と断言した。

一方、同州の住民でサンダース氏を支持するミスティ・コーネリアスさん(38)は、ウォーレン氏の方がトランプ氏の対抗馬としてふわさしいかもしれないと考えている。既に特定の色がついたサンダース氏よりも、ウォーレン氏は新鮮味があるという。

2人は政策面で重なる部分が多いものの、選挙戦におけるアピールの手法は違いが鮮明だ。

オクラホマ州の労働者家庭で育ったウォーレン氏は、地方を地盤とするポピュリスト(大衆迎合主義者)だと自らを定義しているが、サンダース氏のほうは「ムーブメント(運動)」の主導者であることを強調している。

訴える有権者が異なっているという証拠もある。モンマス大の世論調査の責任者、パトリック・マレー氏は、ウォーレン氏の支持率が最近になって急上昇したのは、サンダース氏だけでなくほかの全ての候補から支持を奪っているからだとの見方を示す。一方で、サンダース氏の中核的な支持層は決して彼を見捨てないだろうという。

ウォーレン氏は女性、中でも大卒者が魅力を感じるかもしれない。これらの層をサンダース氏は取り込むことができない。アイオワ州在住のジャネット・コードウェルさん(66)は「男たちが支配する世界にはもううんざりしている」と述べた。

とはいえ、ウォーレン、サンダース両氏にとって、今のところはそれぞれの陣営に支持者が流れることは最も懸念すべき事態ではない。PCCCのグリーン氏によると、むしろ双方とも急進左派がトランプ氏に勝利できることを訴えかけているという。

投票権を持つ党員の多くはまだバイデン氏を支持しているが、その認識は変わりつつあるという。

(James Oliphant記者)

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン攻撃なら状況一変、シオニスト政権

ワールド

ガザ病院敷地内から数百人の遺体、国連当局者「恐怖を

ビジネス

中国スマホ販売、第1四半期はアップル19%減 20

ビジネス

英インフレ率目標の維持、労働市場の緩みが鍵=ハスケ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親会社HYBEが監査、ミン・ヒジン代表の辞任を要求

  • 4

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 5

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 9

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中