ニュース速報

アングル:懐疑派か日和見か、英首相候補ジョンソン氏のEU観

2019年06月16日(日)09時30分

Andrew MacAskill

[ロンドン 11日] - 英与党・保守党の次期党首の有力補候補と見られているボリス・ジョンソン前外相は、欧州連合(EU)からの離脱を訴えるキャンペーンの「顔」だった。

だがジョンソン氏は、英国とEUの望ましい関係について、過去に矛盾する発言をしている。

これまでの主な発言を振り返った。

●2003年、自身がEUのファンであると発言

「私が超欧州懐疑派ということは全くない。ある意味では、ちょっとしたEUファンだ。もしEUがなかったとしても、われわれは似たようなものを発明しただろう」と英議会に語った。

●2013年、EU離脱は英国の問題の解決にならないと指摘

「われわれの問題のほとんどは、ブリュッセルのせいではなく、慢性的な英国の短期主義や不適切なマネジメント、怠惰やスキルの低さ、一時の満足を追うカルチャー、そして人的・物的資源やインフラへの投資不足からきている」と英紙デイリー・テレグラフに寄稿。

●2014年、EUを動物に例えるなら何かと同紙に聞かれて

「EUは、例えるならロブスターだ。EUはその仕組み自体、参加国に夕食会の場でロブスターを注文させるようにできている。会計は誰か他の国、通常ドイツが、支払ってくれると知っているのだ」

●2016年2月、国民投票を控え同紙に寄せたが掲載されなかったコラムで、EU残留を支持した理由について

「(EUは)すぐ手が届く市場であり、英国企業はもっと開発することができる。こうしたアクセスの割に、会費は比較的安い。なぜそれほど頑固に離脱したがるのか」と記した。ブレグジットを描いた書籍「オール・アウト・ウォー(全面戦争)」が明らかにした。

●2016年2月に同紙に寄せたコラムで、EU離脱支持に転じた理由について

「EUは公共政策のほとんど全ての領域に侵食してきており、ゆっくりと、目に見えない法的植民地化のプロセスが始まっている」とジョンソン氏は執筆。「こうしたEUルールの中には、単純にばかげているものもある。ティーバッグをリサイクルしてはいけないとか、8歳以下の子どもは風船を膨らませてはいけないだとか、掃除機の吸引力の上限などだ」

●2016年2月、同紙に寄せたコラムで、EUとの望ましい関係について

「私は実は欧州支持だ。クロワッサンをたらふく食べ、美味しいコーヒーを飲み、外国語を学んで外国人の女性と仲良くできるような欧州コミュニティなら大歓迎だ」

●2014年に出版した著書「チャーチル・ファクター たった一人で歴史と世界を変える力」で、EUがローマ帝国以降で最長の平和を達成できたことについて

「欧州共同体、今のEUは、(ローマの)アントニヌス朝時代以降で最も長い平和と繁栄の期間をもたらすことに一役買った」

●2016年5月、EUが旧ナチス・ドイツに似ているとする理由について

「ナポレオンやヒトラーなど多数の人がこれを試みたが、悲劇に終わった。EUは、違うやり方で同じことを試みようとするものだ。だが根本的に欠けているものがあり、それが永遠の問題だ。それは、欧州という概念についての基本的な忠誠心の欠如だ」とデイリー・テレグラフに語った。

●2018年7月、メイ首相のブレグジット協定案について

「自ら経済的属国に成り下がろうとするものだ。一部の同僚議員は、失敗協定をいま結んでおいて、後でそれを破棄して再構築できると考えているようだが、まったくのナンセンスだ」と英議会に語った。

●今年3月、メイ氏の離脱協定案を消極的ながら支持する理由について

「われわれはいま、現実にある選択肢から選択をしなければならない。この協定案に賛成票を投じることは非常に辛いが、今後欠陥を修正できればと思う」とツイッターに投稿。

●2012年、ユーロについて

「ユーロは破壊的なプロジェクトだ。成長は硬化的なペースでもたつく。いずれ爆発するが、いつになるか賭けをする気はない」とトムソン・ロイター主催のニュースメーカーイベントで語った。

●英国はどのような関係を築くべきかについて

「単一市場のみでいいだろう。これはEUの偉大な成果だ。社会関連の部分や漁業政策などは、なくて一向に構わない」

●合意なしで離脱する「ハードブレグジット」を選択すべき理由について

「警告が暗く、人々を震え上がらせようする努力が組織的であればあるほど、(市民は)気に留めず、一層決意を固くしてきた。合意なき離脱、又は世界貿易機関(WTO)のルールに従うものが、人々が考える離脱に近いものだ」とデイリー・テレグラフ紙のコラムに記した。

●首相としてどのような離脱戦略を取るかについて

「私が首相になれば、合意があろうとなかろうと、10月31日に離脱が実現する」と今月発表したビデオで語った。

「最終的な合意ができる前に(EUに対する清算金の)小切手を全部書くと同意しなければならないのは、すごいことだとずっと考えていた。良い合意を得る上で、金銭は優秀な溶剤であり潤滑剤だ」と、今月英紙サンデー・タイムズに語った。

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「同意しない者はFRB議長にせず」、就任

ワールド

イスラエルのガザ再入植計画、国防相が示唆後に否定

ワールド

トランプ政権、亡命申請無効化を模索 「第三国送還可

ワールド

米司法省、エプスタイン新資料公開 トランプ氏が自家
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中