コラム

【ウェブ対談:池田信夫×冷泉彰彦】慰安婦問題の本質とは何か<3>

2015年02月24日(火)10時00分

≪対談<1>はこちら≫

≪対談<2>はこちら≫

編集部(日本政府の賠償を求める韓国側には、どう対応したら良いのか?)

池田 僕ははっきり言って合理的な話ができる相手ではないと思っている。それよりも深刻なのは日米関係で、ケビン・メア(米国務省の元日本部長)くらいの人でも、強制連行と強制性の違いなんて理解していない。そのあたりは、誤解を放置した日本側に問題がある。

 一番いけないのは外務省でしょうね。(外国人にとって)強制連行があったかどうかは問題ではないことを日本人が認識しなければならない。この世界とのギャップを、どう埋めるかということが大問題。

冷泉 日韓関係は過去20年くらい、良くなったり悪くなったりと不安定な状態が続いていますが、そのほとんどはメディアが作った感情論みたいな感じです。韓国も日本も政権が変わるたびに、スタンスが変わっている。10年、20年といった長期的な視点で見て、韓国と北朝鮮が統一した場合に、日本が安全保障上の仮想敵とならないよう、ぶれない外交方針を持つことが大事だと思います。

 アメリカの韓国への注意の払い方も非常に無責任です。ポツダム宣言を日本が受諾したときに、朝鮮半島をどうするか国務省は決めていませんでした。韓国は軍事的には重要なのに、アメリカの東アジア外交では重視していないところもある。だから日本側からもアメリカに対して、日韓関係に文句を言うなら米韓関係も本当に一貫した方針でやっているのかと、問うべきだと思いますよ。

picture3.jpg

「日本は長期的な視点に立ち、ぶれない外交方針を持つべきだ」と語る冷泉彰彦氏。(c)Ouichirou Hamada/CCC Media House

池田 日本には外交戦略が欠けている。93年の河野談話で日韓の間で決着をつけたのだから、当時それを世界に向けてアピールすれば良かった。韓国もそれでOKしたのだから、その意味では韓国はルール違反だが、そこは日本政府がきちんと説明しなければならない。

 河野談話とアジア女性基金は日韓双方の合意だったことを実はほとんどの人が理解していない。裁判で言えば、あれは「和解」ですから。和解をもう一回蒸し返す韓国も悪いけど、日本は韓国に対しても世界に対しても、「あれは解決済みだ」と言わなきゃダメ。外交交渉はグレーで済ますこともあるわけだから、グレーで終わったとはっきり示さないと。それを「白か黒か」と言い始めたらまた同じ問題の繰り返しになってしまう。

冷泉 そうですね。日韓の関係を築くという話ですから。「真実は何だ」という問題ではない。でも今池田さんが指摘したようなことを言うと、ネット上の保守的な言論は「とんでもない」ということになってしまう。「河野談話を破棄しろ」とか「河野さんを国会で証人喚問しろ」とか。

プロフィール

池田信夫

経済学者。1953年、京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。93年に退職後、国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は株式会社アゴラ研究所所長。学術博士(慶應義塾大学)。著書に『アベノミクスの幻想』、『「空気」の構造』、共著に『なぜ世界は不況に陥ったのか』など。池田信夫blogのほか、言論サイトアゴラを主宰。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

「平和評議会」設立式典、ガザ超えた関与をトランプ氏

ワールド

中国、トランプ氏の風力発電批判に反論 グリーン化推

ビジネス

英ビーズリー、チューリッヒ保険の買収提案拒否 「著

ワールド

NATO、北極圏の防衛強化へ トランプ氏との合意受
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 2
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレアアース規制で資金が流れ込む3社とは?
  • 3
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている「とてつもなく巨大な」生物...その正体は?
  • 4
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 5
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 6
    ノーベル賞に選ばれなかったからグリーンランドを奪…
  • 7
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 8
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 9
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 10
    サーモンとマグロは要注意...輸入魚に潜む「永遠の化…
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 5
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 6
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 7
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 8
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 9
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story