日本の死者は1万2308人。イギリスと比べるなら昨年4月の状況だ。当時、イギリスでは高齢者施設に死者が集中し、入院と酸素吸入が遅れた感染者が次々と亡くなった。まだ通常株より感染力が最大70%強いとされる英変異株も、その英変異株よりさらに感染力が最大50%も強いとされるインド変異株も登場していなかった。

菅義偉首相は「1日100万人接種」の大号令をかけた。24日時点で1日55万8593人まで増えた。7月末までに医療従事者と65歳以上計4029万人の接種を終えるという。イングランド公衆衛生庁によると、米ファイザー製ワクチンは英変異株にもインド変異株にも有効だ。日本では棚上げされた英アストラゼネカ製も1回接種時ではファイザーに引けを取らない。

INDIAVIRUS.jpeg
東京五輪は7月23日~8月8日、パラリンピックは8月24日~9月5日に開催される。IOCのジョン・コーツ副会長は「選手村に居住予定の75%がワクチン接種済みかワクチンを確保している。大会時には80%を超えるだろう」「日本が緊急事態宣言下であっても安全に五輪は開催できる」と五輪そのものをワクチンで"集団免疫"する作戦を披露した。

集団接種と五輪開催の綱渡り

イギリスで1日50万人接種が始まったのは12月8日。入院患者数は翌1月18日に3万9249人でピークアウトし、1万人を割ったのは3月6日。外出禁止が解かれたのは3月29日になってからだ。日本で高齢者へのワクチン接種が開始されたのは4月12日。菅首相の1日100万人接種が軌道に乗ってもトンネルの出口が見えてくるのは8月に入ってからだろう。

ワクチンの集団接種を展開するだけでも大変なのに五輪開催という綱渡りに日本は挑もうとしている。インド変異株の感染拡大スピードがワクチン展開を上回れば、日本の医療は瓦解するだけではなく、経済の復興も遅れるのは必至。ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は自身のツイッターでこんな疑問を呈している。

楽天の三木谷浩史会長兼社長も米CNNに五輪開催について「自殺的なミッションだ。日本政府のコロナ対策は10点満点なら2点。世界中から人が集まる大きな国際イベントを主催するのは危険だ。五輪開催のメリットは少ない上、リスクは大きすぎる。インドやブラジルなど多くの国が依然として苦しんでおり、祝う時期ではない」と話した。

すべてはワクチン展開のスピードにかかっている。しかしギロチン台に首をのせ、菅首相とIOCが投げる賽の目が「吉」と出るのを祈らなければならない国民はたまったものではない。

【関連記事】